KouheiNakamura

ムーンライトのKouheiNakamuraのレビュー・感想・評価

ムーンライト(2016年製作の映画)
3.7
君と見た永遠。


アカデミー賞作品賞を大本命ラ・ラ・ランドからもぎ取ったことで話題になったヒューマンドラマ。一人の黒人青年が胸に秘めた葛藤を、三つの時代で描く。少年期、青年期、そして…。
アカデミー最優秀助演男優賞を受賞したマハーシャラ・アリ、主人公の母親を演じたナオミ・ハリスらの熱演も見どころ。

映画を観るとき、どこに注目して観るか?この質問の答えは人それぞれだろう。役者という人もいれば、音楽、映像、あるいは全体をなんとなく…という人もいるだろう。観る映画によって注目する部分も変わる。

このムーンライト、僕は映像の映画として観た。名カメラマンのクリストファー・ドイルを意識したカメラワークと一見自然光に見えるが徹底的に色調補正が施された画面は美しく、この映画最大の見どころと言えるだろう。
また美しい画面の中で展開する物語は極めて過酷で、言葉で多くを語らない作り。音楽も特徴的なメインテーマ以外は控えめである。

こうしたストイックな作りのおかげで、主人公の抱える痛みがこちらにも伝わってくる。顔立ちの違う俳優3人が演じる主人公がちゃんと同一人物に見えることも、さりげなく素晴らしい部分だ。

ただ主人公の抱える痛みは万人が共感しうるものだが、主人公が受ける差別はあまり共感出来ない人も多いかもしれない。
賞を取ったことよりも、こういうテーマの作品が評価されたことを喜ぶべきかと。
KouheiNakamura

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