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MIFUNE:THE LAST SAMURAIのろのレビュー・感想・評価

MIFUNE:THE LAST SAMURAI(2015年製作の映画)
4.6

こないだ観た「犬ヶ島」の中で、「良いところも悪いところも好き」というセリフが出てきた。
その言葉どおり、日本文化だけじゃなく、原爆のキノコ雲や夢の島を彷彿とさせるモチーフがあった。
この映画もそう。
三船さんの明だけじゃなくて、暗の部分もすべてひっくるめて称えられている。


スコセッシ監督は語る。「『用心棒』でミフネは誰に仕えるか考える。そして、自分の正義感に仕えると決めるんだ」
「1941」で三船さんと仕事をしたスピルバーグ監督は「あんなに笑う人だとは思わなかった。クリストファーリーと意気投合していたよ」
「宿のご飯がマズイとね、にんにくをバーッと入れて、お肉や野菜をサッと炒めてね。ほら食え!って」と笑うのは司葉子さん。
そして土屋嘉男さんは何度も言う。「三船さんは、本当にガマンの人だよ。僕たちが愚痴をこぼしても、三船さんは静かに耐えていた」

印象的だったのは、戦中・戦後のお話。
特に、三船さんの息子さんがおっしゃったエピソード。
特攻隊として戦った三船さん。
まだ若い兵士を戦場に送り出す時に、「『天皇万歳!』なんて言って死ぬな。どうせ死ぬなら『おふくろ!』と叫んで死ね」と声を掛けたこと、涙ながらに語っていたそうだ。


自社の灰皿や床を掃除するのは見慣れた光景となり、スキャンダルで叩かれたときには社員に「誰も話を聞いてくれない」と本音がこぼれる。
映画からテレビドラマの制作へ、苦渋の決断。
晩年、セリフを覚えられなくなると、息子さんがカンペを掲げて撮影に挑む。

わたしはね、この映画を観ていて親近感が湧くとともに、寂しく哀しくなった。
映画の中の三船さんはいつも強くたくましいヒーローだから。
だけど、その輝かしい姿だけを取り上げるのは、やっぱりちがうよね。
このドキュメンタリーから、三船さんのいろんな姿が浮かび上がるのを感じました。






( ..)φ
登場したたくさんのチャンバラ映画。
中でも「長恨」、素晴らしい映画だった。
大勢に囲まれる一人の武士。
もはやこれまで…と思ったその時、敵の血が付いた刀をね、ガッと舐めるの。
自らを奮い立たせてまた戦う。
この迫力が、もうスゴイ。
前のめりで見てしまいました。



( ..)φ
戦中、黒澤さんがプロパガンダ映画を製作していたこと、その経験のおかげで「権力の言いなりになってはならない」という想いが強まり、権力に屈しない・抵抗する人々を描きはじめたこと。今回はじめて知りました。
そしてGHQの政策で7年間チャンバラ映画が禁止されたこと、解禁と同時に「七人の侍」が撮影されたこと。
そういう背景を知ると、また観たくなっちゃう。
もうすぐ午前十時の映画祭でリバイバルされるから、今度はスクリーンで。




※コメント欄 自主閉鎖中m(__)m
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