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退屈な日々にさようならをのkoyaのレビュー・感想・評価

退屈な日々にさようならを(2016年製作の映画)
4.5
今泉力哉監督の映画ってメジャーなものは除いて大体「別れ話」が出てきます。
そして大体、片方が別れたい、もう片方は別れたくない、でごねごねする。

好きになるときは一緒でも、別れる時は気持は別々というより正反対。

この映画は有名な俳優さんは出てこないし、東京と福島、2つの舞台で今泉太郎と次郎という双子の兄弟が出てきます。

東京にでてきて、映画監督を目指す次郎。
実家、福島に残って稼業を継ごうとするけれど続かない太郎。
これは明らかに監督自身の姿でしょう。

だんだんこの2人が中心になってきます。
ぼそぼそ、ぽつぽつとした喋り方は、演劇的ではないし、ドキュメンタリーでもない。
これこそ今泉ワールドのような気がします。
声高でなく、抑えた調子で淡々と話す。
その内容もメッセージ性が強い訳ではなく、日常会話の延長のようですが不思議と退屈しないのです。

今泉監督はスローモーションのシーンをよく入れるのですが、そのセンスがとてもいいですね。
この映画では「清田ハウス」の女の子たちがアパートから飛び出して輪になって踊る、をスローモーションで撮っていて曲もいいし、不思議な空間を作り出すセンス、とても好きです。

こういうのは理由理屈ないもので、例えば習わなくても歌が上手いとか絵が上手といった生まれついての才能のような気がします。
真似することはできても、作り出すことはなかなかできないのでは?

映画はなかなかはきはきと進みませんが、停滞する人々を丁寧に描いた映画。とても好き。
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