カツマ

ハローグッバイのカツマのレビュー・感想・評価

ハローグッバイ(2016年製作の映画)
4.2
10代の頃に戻りたいとは思わない。グループでいれば息が詰まり、一人でいれば友達がいないと思われる。この作品は教室のクラス内にあるその対照的な孤独を、一つの音楽がまるでSNSのような繋がりを生んだ物語。LINEのメッセージよりも、友達だよね?なんて聞いてくる空っぽの言葉よりも、ただそばにいて泣かせてくれることが本当の繋がりなのかもしれない。瑞々しい筆致で紡がれる菊地建雄監督の第2作。ピアノの音が聞こえるたび、かすかに震える涙腺を感じていた。

クラスの花形グループに所属するはづきは、元カレとの間に子供ができてしまったかもしれないことに頭を悩ませ、妊娠検査薬もなかなか試せずにいた。対していつもクラスの隅っこでひとりぼっちの葵は、万引きをしてストレスを解消するという密かな闇を持っていた。
はづきにとって葵は『委員長』と呼んで小馬鹿にする程度の地味な存在でしかなかったが、ある日、偶然鉢合わせた認知症のおばあさんを警察に送り届けたことが縁で、2人の距離は少しだけ近づく。おばあさんはかつて愛した人へラブレターを届けようとしていたが、家族は彼女を養護施設に入れようとしていた。葵はおばあさんのラブレターの相手を探そうとするのだが、はづきは乗り気ではなく・・。

クラスの中では正反対の立場にいるはづきと葵。2人の共通点は、誰にも言えない秘密があり、それを共有できる人がいなかったということだった。この映画はあるおばあさんを対角線にして、対極にいた2人の交流を描いた物語。
印象的なラストカット。LINEの交換をしていなくても、グループが一緒じゃなかったとしても、2人はきっとどこかで繋がっていると、その歌は教えてくれた。

10代の頃に戻りたいとは思わない。青春は苦しいことばかりだ。そう、だからこそ、今、あの時代に想いを馳せる。
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