革芸之介

山<モンテ>の革芸之介のレビュー・感想・評価

山<モンテ>(2016年製作の映画)
3.9
熱い。情熱的なナデリ映画大爆発。でも画面は曇天、陽が当たらないので薄暗く、灰色のイメージが画面を覆う。

山の崖の下の荒野にたたずむ家の描写や、斜面で荷車引く様子など画面作りも素晴らしいのだが、なんといっても岩壁をツルハシハンマーで主人公がひたすら叩く、打ちつける「かーん、かーん」って響く音がもう中毒性ありすぎてグルーヴィー。だんだんリズミカルに聞こえてきてバーカッシブな響き。不思議なんだけど気持ち良くてドラムみたいな感じ。人力変形ブレイクビーツ。

そして、この音が希望の音として耳だけでなく体全体に鳴り響く。そもそも山の岩壁をずっと叩き続けるなんて主人公は狂人であり奇人なのだが、周りに狂人と思われても、主人公からすれば自分の信念に基づき山に戦いを挑んでいるのであり、勝てない勝負だとしてもそれに挑み続けるおかげで壊れかけた家族の関係も修復されちゃう。息子まで「かーん、かーん」の山を叩く行為に目覚めちゃう。

そしてこの山に挑み続ける奇人は「CUT」や「駆ける少年」の主人公達の分身でありナデリ監督の分身でもある。ラストの色彩は「駆ける少年」の炎の色彩を思い出した。

ちなみにフィルメックスのQ&Aで言ってましたが、本作の音響編集作業のため数ヶ月ナデリ監督は西荻窪に潜伏滞在していたそうです。うわぁ~ナデリ監督って普通に中央線とか乗ってそうだよなぁ。
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