踊る猫

デヴィッド・リンチ:アートライフの踊る猫のレビュー・感想・評価

3.5
やや期待外れ。まあ仕方がない。デヴィッド・リンチ自身がカメラを回しているわけではないのだから(その意味では、リンチ自身が撮った実験的映像及び『イレイザーヘッド』が浮き上がって見えるのは「風格」の違いか)。リンチの生い立ちを追い掛けるというところも見どころではあるが、さほど掘り下げが足りているとも思われず、ただ伝記的事実をさらりとなぞって終わった感は否めない。ただ、裏返して言えばリンチの語り口が思った以上に誠実で慎重であることが興味深い。思慮深く、饒舌/早口ではなく言葉を選んでひと言ずつ石橋を叩いて渡るように話し出す。リンチはもっとサーヴィス精神のあるお調子者ではないかと思っていたのだが、むろんこの映像だけで彼を判断することは出来ないが私が浅はかだったということに落ち着きそうだ。ファンなら楽しめる出来ではある。リンチをめぐる謎はますます深まったという感じか(『ツイン・ピークス』に代表されるリンチ・ワールドをめぐる謎よりもこちらの謎の方がより興味深いが)?
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