ひろ

女の中にいる他人のひろのレビュー・感想・評価

女の中にいる他人(1966年製作の映画)
4.0
エドワード・S・アタイヤの「細い線」を原作に、成瀬巳喜男監督が映画化した1966年の日本映画

メロドラマの巨匠成瀬巳喜男のサスペンス映画というのが異色だが、過ちを犯した夫の妻の心情を巧みに描いているところは、やはり成瀬映画らしい。自分の罪に苦悩する夫と、自分と子供の未来を守ろうとする妻。夫婦の思惑のすれ違いが観ていて怖い。秀逸なタイトルである「女の中にいる他人」にあるように、情とは切り離した女の中の別人格には身震いする。

憔悴していく田代を演じた小林佳樹の芝居もよかったけど、優しくできた妻でありながら、即座に立場を守ろうとする妻を演じた新珠三千代が素晴らしかった。宝塚のトップスターだった気品を感じさせながらも、女の怖さも表現していた。妻を殺されたにも関わらず、男前過ぎる杉本を三橋達也が好演している。

殺された妻さゆり役の若林映子。この作品では殺されてしまうから出番は少ないけど、海外での人気が高かったという美貌には惹き付けられる。「007は二度死ぬ」でボンドガールに選ばれたのは伊達じゃない。若き黒沢年男が脇役で出演していた。成瀬映画の常連俳優があまり出ていなくて、サスペンスというのも珍しいけど、やっぱりこの監督は女性を描くのが上手かった。
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