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呪われし家に咲く一輪の花のshihoのレビュー・感想・評価

呪われし家に咲く一輪の花(2016年製作の映画)
4.5
《あなたがそれを見つめる時、それもあなたを見つめている。》

〜あらすじ〜
高齢になった女流ホラー作家の世話に来た住み込み看護師のリリーのことを、作家女性は「ポリー」と呼ぶ。ある時その名は彼女の著書「壁の中の淑女」に出てくる女性の名だと知り、リリーは恐る恐るその本を読み始める─。


 亡霊のいる家ホラー。大好きで2回観てしまった。家の中の撮り方、特に光の捉え方が素晴らしい。窓からの自然光。暗い部屋で光を反射して輝く登場人物の瞳がいい。夜中の灯りをつけたダイニングの心許なさ、真っ暗闇から朝になった時の冷え冷えと室内を照らす日光。可愛らしい造りの家なのに、日が昇り沈みする中で時が経ち、この家だけが取り残されているような印象を受ける。外界とは別の時間が流れているような感覚だ。

時折差し込まれる霊の映し方が凄く好きだ。ボヤボヤしていて輪郭が分からない、暗闇の中に浮かび上がる像。どこを向いてるのかもよく見えないが、あまり見ていてはいけないような気がする。目が合ってはいけないような気がするもの。

古典ホラーの雰囲気を漂わせながらも、登場人物が少なく映像や演出が現代的に洗練されているので、世界観に集中してどっぷり浸かれた。音はわりとずっと怖い。強襲するバケモノ系ではないのでそういうホラーを希望している人はがっかりするのかもしれないが、登場人物の語りが入ったり、アングルが変わるとドキッとしたり、2周目は仕掛けについて色々考えてまた怖くなってしまう、そんな興味深い作品だった。
「回転」や「赤い影(don't look now)」や黒沢清作品を連想した。見せ場のシーンは大変怖かったなぁ。(10回くらい見直した)

タイトルは"若くして死に、生前の自分のことばかり考えながら、時代から取り残され、家の中で朽ちていく女性の霊"のことなんだけど、この作品のテーマは恐らく、『それ=【死】と見つめ合ってはならない』だったのではないかと思った。ストーリー展開バレになるので細かい解釈はネタバレコメントに書いておきます。

好きな人には堪らない作品だと思う。暗い部屋で一人でじっくり観たい作品。やぁやぁ我こそはホラー好きだ!という人はぜひ観てほしい。良い映画体験でした。掘り出し物です。
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