黒沢清監督はここに来て持ち駒を全て使い尽くしたな、という感を抱く。つまりこれまでやって来たことの集大成。ストーリー自体はそれこそ『CURE』から『クリーピー 偽りの隣人』に至るまでの「他者」が自分の世界を崩壊させて行くというパターンなので面白味はないのだが、微妙な陰影の使い方やアクション場面(『セブンス・コード』を彷彿とさせる)、そして最後の大スペクタクルでこちらを引きずり込む。この映画は期せずして吉田大八監督の『美しい星』とシンクロしている。どちらも 3.11 以降の崩壊した世界を描きつつ、しかしそこから希望を見出そうとして愚直に時代に対峙しているのだ。その姿勢を大いに買いたい。あまり近年の作品に満足感を抱いていなかったのだけれど、ここまでガツンと来られると「やられた!」と唸るしかないではないか。ただ、キレッキレの演出がもう少しあればとないものねだりをしてしまう気持ちもある。