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ミッドナイト・エクスプレスのtjZeroのレビュー・感想・評価

3.9
1970年のトルコ、イスタンブール。
アメリカからの観光客ビルは、隠し持っていた大麻を空港で発見され収監。予期せぬ長期の監獄生活を強いられる…。

アラン・パーカーは好みの監督さんなんだけど(『フェーム』、『バーディ』、『ザ・コミットメンツ』など)、代表作といわれる本作は未見で、この年末にようやく念願の鑑賞。

微罪の大麻所持が密輸に格上げされ、刑期も数カ月→4年→30年…と絶望的に伸びていく。
法廷の審理も恣意的で、国際情勢や国家のメンツに左右され、量刑の基準はあって無いようなもの。
さらに刑務所の環境も劣悪で、容赦ない演出と共に主人公が追いこまれていく。

序盤では、母国で待つ恋人に当てた手紙の文面がナレーションとして登場し、主人公がまだ自分を客観視できている様子が伝わる。
それが後半になると、手紙を読むナレーションは一切登場しなくなり、孤独や絶望感が一気に高まり、彼が正気を失っていく姿がクッキリと残酷に描き出される。

オープニングで警察に捕まるまで鳴り響いていた彼の心臓音が、クライマックスで再び鳴り出すタイミングとか、いちいち演出が絶妙でうならされる。

実話の映画化…ってのがさらに恐怖感をあおる。こういうタイムリーでジャーナリスティックなテーマを物語に反映させるとは、さすがのオリヴァー・ストーン(による脚本)。

自分は映画を観た後は、本棚にある双葉十三郎さんの『ぼくの採点表』をレビューの参考に読むことにしてるんだけど、本作の採点は75点で、評論の最後は監督の才気ぶりを評して、
”パーカーはなんでも書ける万年筆”
と結んであった。
アランの演出に匹敵するかのような、あざやかな切れ味のレビューだった。
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