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標的の島 風かたかのmimitakoyakiのレビュー・感想・評価

標的の島 風かたか(2017年製作の映画)
4.6
三上智恵監督の沖縄基地問題を扱ったドキュメンタリーを見るのは「標的の村」と今作で2作目です。
前回も思いましたが、ドキュメンタリー作品の力強さをものすごく感じ、胸に刺さりまくって涙なしには見れませんでした。

今作では「標的の村」にもあった辺野古の新基地と高江のオスプレイ ヘリパッド建設に加えて、新たに宮古島と石垣島の自衛隊のミサイル基地建設をめぐってそこに生きてきた人たちの平和を願う思いと必死の抵抗が描かれていました。

タイトルにもなっている「風(かじ)たかた」とは風除け、防波堤のことで、作品の中では、繰り返される米兵によるレイプ、暴行事件から子ども達を守る、或いは、辺野古や高江の基地建設を止めるべく、身体を張って工事車両を入れないように座り込みをして、これ以上沖縄をアメリカの軍事拠点にさせないため、日米両政府から沖縄を守る防波堤となることだけでなく、アメリカの戦略である「エアシーバトル構想」の一環で南西諸島を軍事要塞化して中国を軍事的に封じ込める「防波堤」にしようとしている、そんな意味を持っています。

先祖代々から土地に伝わる踊りや歌、祭など独特の文化を大切にし、若い人たちにも受け継がれている沖縄。
基地建設反対の運動にも歌や踊りで抵抗する姿が映ります。
本土に住む私にはピンと来なかったのですが、この島を、生活を文化をずっとこれからも大切にしたい気持ちと基地建設に反対する事は繋がっていることが少し分かった気がしました。

日本政府は中国の脅威を喧伝し、日本を守るために石垣や宮古にミサイル基地は必要だと言いますが、そんなものがある事で逆に標的になるわけで、島が標的になればどこにも逃げ場がない上、地下水に頼って暮らしている住民にとって、地下水脈のある所に弾薬庫を掘られたりしたら、水脈が汚染されるのではないかという不安も大きいのです。

住民には賛成の人もいて、中国から日本を守らなければならないとか、自衛隊が配備される事で、町に子どもが増えたり経済も活性化する事を期待していると言います。

それでも多くの人達がミサイル基地建設に反対するのは、かつて沖縄に米軍が上陸し地上戦になった時、日本軍は住民を守るどころか、捕虜になって軍の情報が敵に渡る前に集団自決を迫るなどしてきたり、石垣島でも軍の秘密を守るためにマラリア禍の地域に住民を追いやり、そこでおびただしい数の住民がマラリアに感染して死んでいった、そんな歴史から住民は守られずに島ごと捨て石にされる事を経験上知っているからなんですね。

辺野古や高江には全国から警察、機動隊が集められ、小さな集落に1000人以上が配置され、全国各地のナンバープレートをつけた警察車両が列をなしていました。
そこで反対する住民と対峙する若い機動隊員の表情を見てると、とても悲しい気持ちになります。
きっと住民のために正義のために警察官を志したんだと思います。
それが、基地を嫌だと言ってる人達を時に激しい暴力でもって排除する。
中には住民の叫びを聞いて目を閉じてうつむく隊員、切ない表情の隊員もいます。
こんな仕事をさせられるなんて、きっと若い機動隊員にも葛藤があるのではないかと思えました。

上映後の三上智恵監督の話をじかに聞き、沖縄が置かれている状況、日本やアメリカがやろうとしている事を知って、戦争がもうすぐ足元まで来ていて、私たちが毎日普通に生活してて知らぬ間に、知らされない間に、自ら戦争に向かって行ってたなんて、怖くて震えが止まりませんでした。

先日のトランプ大統領来日でも、散々北朝鮮危機を煽ってアメリカの武器、防衛システムを高額で売りつけられ、それを買う約束をしてしまった安倍首相。
日本は戦争しない国だと思っていたのに、いつのまに…。

沖縄を見れば、司法は機能せず、人権や民意は無視され、権力が暴力を振るって力ずくで押し通している事が露わで、民主主義はどこに?と思ってしまいます。

これは沖縄の問題だけではなく、日本に住む私たちみんなの主権や民主主義の問題なんだと思いました。
三上監督が沖縄戦に関する証言を取材しているという次回作も絶対に見なければと思います。
多くの人が見るべき作品です。

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