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三度目の殺人のrayconteのレビュー・感想・評価

三度目の殺人(2017年製作の映画)
5.0
この映画は、単純なミステリーではない。真相は語られず、誰の目からも明白な答えは用意されていないが、それは本質的な世界そのものであり、唯一の真実だといえる。

家族愛、恋愛、宗教、戦争。そのどれもにおいて明確な真実は存在しない。あるのは信じたいものを信じ、見たいものだけを見るという個々の視点だけで、人の数だけ存在する視点がレイヤードされて形成するものが世界なのだ。
三隅は悪人だったのか、聖人なのか。答えは観るものに委ねられる。誰かが救われたと思いたければ思えばいい。ある意味では無機質な結論とも思えるが、私はこれをとてもポジティブなメッセージだと解釈した。
世界は明るいと自分が思う限り、本当の意味でその希望を否定することは誰にもできないということだから。

是枝監督の映画には、常にいかなる主体性をも肯定する強さが根底に流れている。
虚飾のない静かな演出は、忌憚なく現実を肯定してくれているのだといつも思う。
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