LalaーMukuーMerry

ヒトラーに屈しなかった国王のLalaーMukuーMerryのレビュー・感想・評価

4.0
World War II in Europe Every day というサイトに行くと、この映画と関係する第二次大戦中のスカンジナビアの領土の変遷がよくわかる。(連合国は青(英仏)、枢軸国は赤(独伊)、中立国は白で色分けされている)
          *
スカンジナビア諸国は開戦当初(1939/9/1)中立だったが(フィンランドだけは隣国ソ連と特殊な関係)、1940年4月9日に突然デンマークが赤色(ドイツ)に変わり、ノルウェーは青色(連合国)に変わる。同じ日に青色のノルウェーの中に1つだけ、首都オスロ付近に赤い点ができ、それが日を追って急速に拡大して5月9日までにノルウェーの南半分はドイツに占領されてしまう。そして6月10日には一気に全土がドイツ領になり、その状態は1945年5月4日ドイツ降伏の日まで続く。(モノ知りっぽく書きましたが、初めて知ったことです)
          *
この作品はタイトルから受ける印象から「英国王のスピーチ」のような、ちょっと感動的なスピーチが出て来る感じかなと思ったが、だいぶ雰囲気が違った。ドイツに占領された後に王はロンドンに亡命し、そこから抵抗を続けるよう国民を鼓舞し続けたのだが、そのことは全く描かれてない。1940年4月9日の突然の変化の前後3日間にいったい何が起こったのか? ノルウェー国王を中心にドキュメンタリータッチで描かれている。そして作品のテーマは、国王が民主主義を守るとはどういうことか、ということ。BGMがないので地味な印象ですが良い作品だった。
          *
ノルウェー国王ホーコン7世は、1905年にノルウェーがスウェーデンから独立した時、立憲君主制を選択した国民が、お隣のデンマーク王室の王子を国王として迎え入れることに決めたことから誕生した国王である。つまり歴史上はじめて民主的に選ばれた国王だった。(へぇ、そうだったの)
          *
今の日本の天皇と同じように権力のない筈のノルウェー国王に、ドイツ公使が武力を背景に外交交渉を迫ってくる。これに対する国王のセリフがとても良かった。
          *
          *
独裁国家のリーダーには、まどろっこしい民主政治の仕組みや手続き、その基礎にある人権尊重の精神が理解できないに違いない。今のどこかの国のリーダーにも、この国王を見習ってほしい。