踊る猫

ライ麦畑で出会ったらの踊る猫のレビュー・感想・評価

ライ麦畑で出会ったら(2015年製作の映画)
4.2
これみよがしなギミックをさほど用いず(あくまで「さほど」だが)、正攻法で冴えない演劇青年と彼を密かに恋する女の子を描いた映画としてこの作品を高く買いたいと思う。ロード・ムービーが基本的に全てそうであるように、この映画も青年の変化と成長を描いている。最初はサリンジャーに会って『ライ麦畑でつかまえて』を舞台化したいという野望をぶつけたいと思う彼が、女の子とのウブと言えばあまりにもウブな珍道中を繰り広げる中で自分が本当に大事にしたかったものはなんなのかを確かめていく。あまりこういうタームは使いたくないが、彼の佇まいはあまりにも「文化系」男子のそれであり、従ってモテない男の子がなぜか彼に惹かれる女の子とイチャイチャするようでしない(鈍感すぎるから!)というクリシェをそのままなぞっているようにも感じられる。それがしかし退屈でないのは細部がしっかりしているから。いじめもスクールカーストも(まあ「想定内」のものではあれ)描き込まれていて、こちらを納得させる。土台がしっかりしているから彼らの恋愛未満の青すぎる関係を見守りたくさせられる。この監督と主人公たち、期待してもいいかもしれない。
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