mimitakoyaki

夜明け告げるルーのうたのmimitakoyakiのレビュー・感想・評価

夜明け告げるルーのうた(2017年製作の映画)
3.5
アニメはほとんど見ないし、湯浅監督の事も知らないし、監督の作品も見た事ない中での鑑賞でした。

冒頭から丹後の伊根町みたいな舟屋のある漁村の風景や民家の描写にちょっと感激して、あー良いなぁ!と期待も膨らみ、その後昭和のテレビアニメの始まりみたいな手作り感のあるオープニングもなんか懐かしい感じで面白くてワクワクしました。

主人公のカイが両親の離婚で心を閉ざしてるっていう暗い性格も、マーニーのアンナちゃんみたいな闇を持つ捻くれた複雑な内面の子が好きなので、お母さんからの手紙を未開封のまま置いてあるところとかも良かったんですけどね、この子の寂しさややり場のなさや中学生ならではの拗らせた感じとか、もっとこんがらがった心が描いてあれば、もっとのめり込めたかなと思いました。

でも、カイとルーが夜の街を散歩するのは幼い妹を連れてるみたいで、カイも自然とルーに癒されて笑顔を見せたりするところなんて、ほんとほっこりしてとっても良かったです。
2人の境遇が似てる事もより互いを近く感じ、より特別な存在になっていくのを感じられました。
ただ、カイの家の辺りは田舎の漁村て感じなのに、散歩の時にはコンビニやら電車やら綺麗な夜景もあり、なんや結構な都会やんかと思って、あのシーンで開けた街の感じを出す意味は何だったんだろうと思いました。

ルーの事が広く知られるようになり、それを町興しに利用しようとする大人達の勝手さは既視感があるし、ルーに全部を持ってかれたユホの嫉妬から来る行動なんかは、後々の騒動の大きさを考えると幼稚に感じてしまうので、ユホの自分の中に抱えた葛藤なんかももっと丁寧に描写してあれば、ユホにも感情移入できたんだろうかと思いました。

おじいさんの過去の回想やライブでみんなが踊り出すところは絵のタッチが変化して面白かったし、音楽も良かったし、良いところはあるのですが、人魚島が壁のようにそびえ立つことで町が日陰になることから日無町という地名もついてる設定の割には、日陰感があんまりなくて、日陰だから人魚が生息できるというかなり重要な要素なので、そこがもっと強調されてないとなぁ…とか、ルーのお父さんてあのビジュアルでなんで商工会議所だか漁協かのメンバーになれんねん⁉︎とか 笑、そういう設定に疑問というかツッコミ所もあって、気になってしまいました。

ルーとの出会いによってカイが成長し大きく前に踏み出せるようになるけど、それよりもお爺ちゃんとタコ婆のくだりのインパクトの方が優ってしまってるところも惜しい気がしました。

アニメ慣れしてないからか、ファンタジーについて行けなくて、騒動になってしばらくしてくるとちょっと置いてけぼり感もあって集中しにくかったですが、ルーも愛くるしいし町の情景も美しく絵が良かったです。

94
mimitakoyaki

mimitakoyaki