GodSpeed楓

サスペリアのGodSpeed楓のレビュー・感想・評価

サスペリア(2018年製作の映画)
4.3
1977年に製作された超傑作ホラーの、2018年リメイク作。近年になってから「死霊のはらわた」、「キャリー」といった過去の超傑作もリメイクされており、そのどちらも新しいアプローチで製作されていたので個人的には満足していた。しかし本作は"満足"なんて感情のレベルでは収まらず、同一設定の別作品として新たに産み出された超傑作として"成立"、いや、"完成"していると言える。

1977年版には、天井から大量の虫が沸くという、観る者全てのメンタルを直接攻撃してくるというセンシティヴ極まりない極悪シーンが存在したが、本作はそういったSAN値ガリガリなシーンは無くなっているので、どうか安心してほしい。

その代わりと言ってはなんだが、トム・ヨークの書き下ろしBGMとともに前衛ダンスを踊ることで産み出された呪いパワーで、離れた場所にいる人物を"踊らせて殺害する"というハイセンスな手法を講じてくる。これぞ2010年代の呪殺と言わずして、なんと言うのか!人間の肉体が、骨が、間接が、予備動作も無く急旋回してヘシ折れ、泡を吹いて死亡するシーンの衝撃たるや!恐怖と感動が入り交じった身震いが起こる事は間違いないだろう。

上述した通り、本作は呪術的な要素がマシマシになっており、より「魔女」を感じられる前作とは別ベクトルのホラー映画となっているのだ。"この行動が儀式になっており、それに伴って事象が発生している"というのが非常に分かりやすく描写されており、映画で呪いを表現するというのはこういう事なのか!と思わず唸ってしまう。

尚、暗黒舞踊とトム・ヨークの相性の良さは、既に「Lotus Flower」のPVで披露した"暗黒阿波躍り"にて証明されている事だが、本作は決してレディへの新作MVではない事には注意願いたい。

オルガの死体回収時に披露した、鏡の扉を開く時の謎ポーズにもゲラゲラ笑ったし、あのババアどもはしっかりと魔女信仰ガチ勢なのが最高に良い。強い信仰心によって突き動かされているのは間違いないだろう。

また、本作の特徴的なアプローチとして、ホラー映画としての要素だけではなく、舞踊団の真実に迫ろうとする精神科医からの視点という、サスペンス要素も挙げられる。内と外から、舞踊団の秘密に迫っていく構成、そしてそのどちらの視点からもヒリヒリした緊張感を得られるというのは見事と言わざるを得ない。

監禁されて辱しめを受けていた警察官が最期に受けたであろう拷問と思われる"オチンポフック攻め"の描写が無くて本当に良かった…流石に目を反らしてしまいそうだったので、実は本作で一番緊張したのは該当のシーンである。

しかし、素朴なダコタ・ジョンソンの美しさときたら溜め息が出る。田舎から出てきた垢抜けていない姿にしか見えない…アラサーだぞ…。と思っていたが、「ピンポン」の主要メンバーも当時揃いも揃ってアラサーだったので、そこまで凄いことでも無いのかもしれない。ドラゴンは全く高校生に見えないが。

最終盤に開催される"陰毛丸出し全裸スーパーダンス大会"は、ここまで溜め込んできた謎や恐怖を全て具現化していると言えるだろう。「らんま1/2」のシャンプーが会得できなかった"死の接吻"(「グレンラガン」のヨーコは会得してましたが)を披露したスージーの妖艶さに胸が高鳴った後の、"マルコーース!"からの「スキャナーズ」御用達の脳天大爆発シーンは爆笑必至の鉄板シーンである。あんなシーン、誰も堪えられはしない。

ホラー、サスペンス、オカルトが入り交じる本作から最も感じるもの。それは、神、悪魔、魔女に共通するものである"畏怖"という感覚。この映画を観た人は、軒並みこの感覚を身をもって体感するだろう。信仰の都合で日本人にはあまり馴染みの無い感覚かと思われるが、是非視聴して味わってほしいものだ。

だだし、この映画を観て「ファックに似た感覚だった」なんて感想を持った方や、幼い頃から何となくベルリンへ意識が向いていたような方は、もしかしたらマザー・サスペリアムなのかもしれない…。

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GodSpeed楓

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