ゲイリーゲイリー

イット・カムズ・アット・ナイトのゲイリーゲイリーのレビュー・感想・評価

3.0
"それ"が何かということではなく、
"それ"によって炙り出される不安や
猜疑心、恐怖心を描いた作品。

主人公たちの置かれた状況、そして不安や猜疑心、恐怖心に呑み込まれていく様子は今現在の社会状況とあまりにもリンクする。
誰が感染者なのか。本当に安全なのか。
こうした声も最早作中のものではなく、現実のものとなってしまった。

猜疑心や恐怖心によって身を守ることもあるだろう。
しかし、それらに囚われてしまうと不寛容さや絶望につながってしまうのだ。

本作では、2つの家族が主要人物で他にはあまり登場人物が出てこない。
そういった必要最低限の人物のみを
描くことで寓話性が高まっていた。
あえて曖昧に描くシーンや、白黒ハッキリ見せないシーンなども作り手の意図するところだろう。
個人的には、ポールとウィルが夜にお酒を飲みながら語り合うシーンが印象的。

こんな世の中になっているからこそ、
本作は他人事ではない。
ウイルス自体による影響以上に、ウイルスを恐れるあまり絶望や不安に取り憑かれることこそが最悪の状況なのだと再認識させてくれた一作。