るるびっち

全員死刑のるるびっちのレビュー・感想・評価

全員死刑(2017年製作の映画)
3.4
残酷な殺人は、全て家族のため。
美しい家族愛。
けれど、殺しの正当化に使われた家族愛も実は偽物。
面倒で汚い仕事を末っ子に押し付ける傲慢家族だった。
首を絞めながら、「喉乾いた」とジュースを補給。
そんな間抜けな笑いが頻発するのは後半で、そのノリで楽しむには前半が暴力的なだけで詰らない。

恐怖と笑いと言う相反する不条理を組み合わせた新しさや面白さが売りなのだが、それらは描写レベルに留まっている。
家族愛と殺人が、感慨深いところまで染み込んでいるとは思えない。

不条理な殺人と不条理な笑いを掛け合わせたいなら、
『天才バカボン』が、実は凶悪殺人一家だった。
と言う、アイデアの方がより鮮明化するのではないかと途中で閃いた。
我ながら悦に入った。
それなら世間との常識が噛み合わないバカボンパパの一連の可笑しな言動が、不条理な笑いから一転して不条理な恐怖に変わるだろう。
「賛成の反対なのだ」
他人の意見を誤解でしか受け取らない対応は、笑いからサイコパスに変化する。
こうなるとレクター博士を超える、キング・オブ・サイコパスの誕生である。
常人と違う考えで行動するバカボンパパが隣人を虐殺した挙句、
「これでいいのだ」と、決め台詞を言えば震え上がるに違いない。
しかもバカボンファミリーには、ハジメちゃんという天才ベビーがおり、バカボンパパがどんなに無茶苦茶な殺人を犯しても、それを天才頭脳で完全犯罪に見事すり替えてしまうだろう。
そういう意味では、最強の家族である。
『天才殺人一家 バカボン』という話の方が、笑いと恐怖のバッティングという意味ではぴったりくる。
そう思った時、目前の粗暴家族がひどくチンケに思えて楽しめなかった。
赤塚さんの遺族が了承する訳ないから、成立しない企画だろう。
それでも脳内スクリーンには、本作を軽く超える名作が映っていた。
「これでいいのだ!!」

(調べると、結構事故の形でパパは何人も・・・さすが天才)
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