ひろ

ウィンストン・チャーチル /ヒトラーから世界を救った男のひろのレビュー・感想・評価

4.0
第二次世界大戦時のウィンストン・チャーチルを題材としてジョー・ライト監督が映画化した2017年のイギリス映画

第90回アカデミー賞において主演男優賞とメイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞した

第二次世界大戦、ヒトラーにより西ヨーロッパが崩壊寸前となっていた時にイギリス首相となったウィンストン・チャーチル。常に葉巻をくわえ、酒を飲んでいた癖のある人物が歴史的な人物となったエピソードを描いた作品

同じく第90回アカデミー賞でノミネートされていた「ダンケルク」と全く同じ時期を描いた作品。「ダンケルク」は戦場を描いていたが、この作品は司令室を描いた作品。歴史的にここでイギリスが踏ん張らなかったらドイツが世界制服していたかもしれない。ついでに日本も悪の国家として君臨していたかもしれないと思うと歴史的な転換期だろう

こういった史実を描いた作品はいかに忠実に再現されているかということが大切とされているが、人物にスポットを当てた場合、本人がどう考えていたかなんて本人しか知らないし、たとえ本人による自伝があったとしても盛っている可能性が高い。なので客観的な史実さえ合っていれば、後は作品が面白ければいいのかなと思う

チャーチルの人物像はこの映画では英雄として描かれている。確かに戦争における英雄かもしれない。しかし、戦争の英雄とは人殺しに他ならない。チャーチルは冷徹に戦地の兵士を捨て駒にした人物とも言われている。結果だけ見れば英雄かもしれないが、子供を捨て駒にされた親からしたら悪魔だ。描き方次第で人物像なんてどうにでもなるのだ

そんなことを言っていたら作品を楽しめないので、先入観なしに見たら映画としてはすごく面白かった。こういった作品で泣くとは思わなかった。チャーチルが市民や大臣の声に耳を傾けるシーンはすごくよかった

チャーチルを演じたゲーリー・オールドマン。昔から大好きな俳優だけど、これまでは個性的な役が多くてショーレースとは無縁だった名優。ついにオスカーを獲得したのは感動した。実在の人物を演じるのはモノマネというレベルではだめで、憑依というレベルにならないとオスカーは受賞できないだろう。ゲーリー・オールドマンが演じていることを忘れるぐらい憑依していた

そんな憑依の手助けをしたのがメイクアップアーティストの辻一弘だ。ゲーリー・オールドマン自ら指名された辻一弘の神懸かった特殊メイク。撮影の大部分の時間をメイクに費やしたというぐらいこだわった特殊メイクで、終始アップで映されたチャーチルの肌のリアリティは鳥肌モノだ。日本人が世界レベルで活躍しているのは誇らしい。辻一弘のメイクはいつも驚きに満ち溢れている

ゲーリー・オールドマンを好きな人、歴史好きな人、日本人アーティストの活躍を目撃したい人。そんな人はこの作品を楽しめること間違いなし
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