エソラゴト

ファースト・マンのエソラゴトのレビュー・感想・評価

ファースト・マン(2018年製作の映画)
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過去2作共音楽に関連した作品を描いてきたデイミアン・チャゼル監督。次作は一体どんな題材で挑むのかとても興味津々でしたが、なんと大きく空に向かって飛び出し宇宙空間へ!人類初の月面着陸を成功させたまさしく"First Man" ニール・アームストロング船長の伝記ものだったとは意外でした。(企画自体はラ・ラ・ランドよりも先だったようですが)

とはいえよくよく観ていくと、外っツラは地球から38万キロ離れた場所に空高く外へ外へと向かうストーリー展開なのですが、話の大筋はライアン・ゴズリング演ずる主人公ニール船長の精神面や心情を描くことに重きを置いていてどんどん内へ内へと深く沈んでいってる事に気付かされます。

彼の尋常ではない冷静沈着さ、正確無比な判断力、感情を一切表に出さない無表情さは一体どこから来ているのか?そして「無」の世界への到達は「無」の境地を知る者しかなし得ないものなのか?

前人未到な高みへ到達可能な人物はきっとこういった謂わば常人離れな人、ある意味イッてしまっている人、狂気を宿している人なのでしょう。

映画作品のテーマは監督自身の投影であるとよく言われますが、チャゼル監督が全作を通して一貫して描こうとしているのはこうした人間のそして自己の内なる"狂気"の本質についてなのかもしれません。

そして終盤に訪れる最大の見せ場でもある最果ての地、月への着陸シーン。直前のあまりに大仰な音楽で台無しになりかけてヒヤヒヤしましたが(汗)、人類の大いなる一歩を捉えた場面からはIMAXカメラによる極めて鮮明な映像、そして水を打ったような無音の静寂さ…美しさ尊さ厳かさを体感すると共に「無」の空間にたった独りという怖さ恐ろしさ不気味さもまた同時に味わうことが出来ました。

追記:このカタルシスを体感するために109シネマズ川崎のIMAXレーザーを選択して正解でした。