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ファースト・マンのtetsuのレビュー・感想・評価

ファースト・マン(2018年製作の映画)
4.7
日本最大級のIMAXシアターがある109シネマズ大坂エキスポシティ。
そこでの上映が終了してしまうと聞いたので、駆け込み鑑賞!!

時は1961年、
娘を病気で失った男とその家族。
これは月に初めて降り立った男"ニール・アームストロング"の物語。

正直、本作を観た後、映画を文章として表すことなど無意味なのではないか、いや、もはや不可能ではないかと思ってしまったけれど、
本作における主人公が不可能に挑戦したように、自分も固有の鑑賞体験を形として留めるために、ここに書き残しておこうと思う。

『2001年 宇宙の旅』ぶりにIMAXでの宇宙体験。
あの時も驚異の映像体験に圧倒されたが、今回は以前とは180度違っていた。
極限にまで抑えられたIMAXカメラの大画面映像、そして、見事な静寂。
今回の体験は例えるなら間違いなく引き算の演出であり、もはや、そこには日本の「侘び・寂びの精神」にさえ通ずるものがあった。

事実、IMAXカメラで撮影された大画面1.43:1の画角となるのは、終盤のわずか1シーン程度。
しかし、そのシーンこそが本作の全てであり、そんな豪華な使い方を出来てしまう製作陣にひたすら感服。
そして同時に、新たなIMAXの可能性が広げられたことにただただ圧倒された...。

夢を成し得なかった多くの人々、主人公が心のなかに抑え続けたある思い。
それらが全て結実するクライマックスでは、映像・音楽・編集などで構成される「虚構」としての映画だからこそ味わえる、純粋な喜びを感じた。

本作自体は、「月面着陸」という歴史的事件と、現在明らかになっている事実を組み合わせ、膨らまして作られているとは思うが、それにしてもこの物語が迎える着地はすごい。
彼が偉業を成し遂げるシーンで終わってもよかったものを、あえてあのラストシーンを選んでいるところに「一人の男の人生」を垣間見た。

また、
監督の過去作と比較して観るのも面白い。
『セッション』では、
序盤で夢のために恋人を捨てる男を、
『LALALAND』では、
夢と恋人の選択で思い悩む男を、
そして、今作では、
夢と家族を両立させようとする男が描かれた。
このように物語展開の変遷を並べると、監督が描く「夢」と「愛」の関係性が少しずつ変化しているようにも感じた。
なにより、『LALALAND』が好きだった僕にとっては、その主人公・セブが歩んだかもしれない「もうひとつの人生」のようにも見えた...。笑

というわけで、
「宇宙」という広大な(=マクロな)存在を描きながらも、「大切な存在への愛」という身近な(=ミクロな)テーマを描いた本作。
そのテーマ性は同じく主人公が娘を失う名作SF『ゼロ・グラビティ』にも共通しており、孤独と懸命に向き合う彼の姿に、夢を信じ続ける強さを教えられた一本だった。

P.S.
当時の時代背景をよく知らなかったため、次回は『LBJ』を観たり、ベトナム戦争についてもう少し調べてから観てみたいと思った!
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