mimitakoyaki

ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめのmimitakoyakiのレビュー・感想・評価

4.0
見逃したーー💦と残念に思っていたら京都シネマでやってて見ることができました。
京都シネマさん、わたしの見逃しをいつもフォローしてもらってありがとうございます!

幼い頃にパキスタンからシカゴに移住してきたクメイルは、敬虔なイスラム教徒の両親とは違って、信仰心もあまりないし、ヒゲも生やしたくないし、アメリカで成功しリッチな両親はクメイルが弁護士になることを望んでいますが、クメイルは売れないコメディアンとウーバーのドライバーをやって細々と暮らし、両親はパキスタン女性とのお見合い結婚を強要してきますが、クメイルはそんなパキスタンのしきたりに辟易しているんですね。

コメディライブを見に来ていたエミリーと意気投合し付き合うようになっても、パキスタン人との結婚しか許さない両親のことを思うと彼女との関係も踏み込めないし、親の意向に沿ってとりあえずの見合いをこなしてるとエミリーにバレてブチギレされるしで、困っていたら、エミリーが原因不明の昏睡状態に陥り、生きるか死ぬかの瀬戸際に立たされて…という話です。

タイトルの「ビッグシック」は、文字通り大病した彼女の事を指すのでしょうが、異人種間での恋愛や結婚はダメ、ちゃんとお祈りしろ、ヒゲを生やせ、弁護士になれ…と生き方を押し付けてくる親世代とのギャップや、パキスタン人だからとISIS呼ばわりされるなどの差別を受けるというような、人生を前に進ませない、社会や家族間、恋人間での大きな障壁みたいなものの意味も含まれてるように思いました。

「大いなる目ざめ」という副題も、彼女が昏睡から目覚める事だけでなく、自分自身が抱える様々な障壁に対して目を背けずに向き合うという事もあるんだと思います。

パキスタンの文化や伝統も大切かもしれないけど、やはり自分の人生は自分が決めるものであって、親と言えども押し付けられるものではないと思うので、日本でもそうですが、悪しき風習や伝統も時代に合わせて見直していったら良いと、例えば大相撲での女人禁制を巡るスッタモンダやいろいろ見ていて思ったりします。

パキスタンという日本人にはちょっと遠く馴染みの薄い国のことも知ることができて面白かったですし、クメイルが家族と溝ができて苦悩しながらも、それでも両親を大切に思ったり、パキスタンを愛する気持ちがちゃんと伝わってくるのも良かったです。

家族が望むしきたりを重んじた生き方と、自分の望む生き方にギャップがある時に、クメイルのようにその狭間で悩み葛藤する人もきっとたくさんいるだろうから、自分の人生と重ね合わせる人もいるんじゃないかと思います。

クメイルの漫談はともかくとして、重くなりそうな話もユーモアたっぷりで笑わせながら見せてくれるし、自分らしい生き方を模索し、夢を追いかけたり、彼女の大切さを失いかけて気付いたり、距離感があった彼女の両親との関係も素敵だったりと、共感できるところがたくさんあるから、移民の国のアメリカでは大ヒットしたんでしょうね。

わたし的には、エミリーのお母さんがレイシストに対して吐いた言葉が痛快で、この人最高!って大好きになりました。
人を人種や宗教や職業や性別などで見下したり差別するような人じゃなかったもんね。
嫌いな人でもその人がいじめられてる時に、毅然と立ち向かい怯まない芯の強さがかっこよ過ぎて惚れました!

自分の周りを取り囲むビッグシックにしなやかなユーモアと優しさと愛で乗り越えるのがとっても素敵でした。
これが、主人公クメイルを演じた本人が、自身の経験をもとに脚本も書いてるというのだからすごいです。
良い作品でした。

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