えいがうるふ

メゾン・ド・ヒミコのえいがうるふのレビュー・感想・評価

メゾン・ド・ヒミコ(2005年製作の映画)
4.4
昔、何かの映画で若かりしデヴィッド・ボウイが老け役をやっていて、美しい男は年取っても美しいもんなんだなーと感心したものだった。実際ボウイは亡くなる直前まで美しい老人だったが、田中泯もきっとその系統の人ではないかと思う。年老いてほぼ寝たきりのゲイという一歩間違えたらかなりきつい絵になるであろう役をあれほど品良く美しく演じられる日本人が他にいるだろうか。「ホテルビーナス」での市村正親の役とも若干かぶるけれど、神々しさという点で卑弥呼は別格に思えたのは、身体芸術の人田中泯ならではの凛とした姿勢や指先までオーラが漂うような無駄なく美しい所作のせいだろうか。静かな最後のセリフがまた良かった。

あと、この映画のオダギリジョーはなんかもう浮世離れした美しい男で、キスシーンも上手すぎてヤバイ。今さら腐の道に堕ちるのか自分?と一瞬焦るほど萌えた(笑)

老いは誰もが避けられないが、LGBT当事者にとってその現実はさらにシビアな問題をはらんでいて、自らの意思を貫き家族を捨てた人間が「老いて介護が必要になったからといって、家族に面倒を見てもらおうなんて都合が良すぎる」と身内に罵られるなんて、まさに予想される未来。全体を観ればぬるいおとぎ話とはいえ、そこらへんを変にイイ話っぽくまとめていないのは良かった。
美しくありたいという意志がおそらく通常の女性よりも強いであろうゲイの皆さんにとっては、老いてなお誇り高い彼らの姿は永遠の憧れなのではあるまいか。
機会があればいつか彼(女)たちに直接感想を聞いてみたい。