円柱野郎

ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書の円柱野郎のネタバレレビュー・内容・結末

3.5

このレビューはネタバレを含みます

1970年代初め、泥沼化していたベトナム戦争について、政府は当初から勝てないと知っていたという内部文書の存在がニューヨーク・タイムス(NYT)に掲載される。
ワシントン・ポスト(WP)の主幹ベン・ブラッドリーはNYTに対抗して取材を始めるが…。

表面的には報道機関に圧力をかけてくる政府と、報道の自由を守ろうとする新聞社の闘いの話。
だが実際に観てみると、ストーリーの主軸は新聞社という男社会の業界で夫の死によって図らずも社主となってしまったキャサリン・グラハムの苦悩と決意を描いたドラマだよね。
冒頭、株式公開に関する会議でのスピーチの練習をしても肝心の場で声が出なかった彼女が、終盤では機密文書の暴露記事掲載で啖呵を切った。
その対比が彼女の責任者としての成長を描いている。
ベンに「編集方針について指図は受けない」と一蹴された冒頭と、掲載の決意について「あなたが背負っているものの大きさが分かった」と言われる終盤との対比にしてもそう。
男社会であることが当然という時代にあって、「世襲だろ」という目を自分の力で跳ね除けたという物語こそがこの映画の主題。だからこそ、この映画のタイトル(原題)は彼女が受け継いだ"THE POST"であるわけだ。
("WP"と"地位"のダブルミーニング)

もちろん機密文書を巡る攻防もそのドラマに花を添えているわけだが、個人的にはこの部分は割と表面的な印象だったというか…。
歴史の断片としては興味をそそるものの、全体を俯瞰するには割と予備知識が求められるし、その辺が結構大胆にまとめられているような気がした。
この映画をキャサリンの物語ではなく実録モノとしてとらえるのならば、ベトナム戦争の背景や歴代政権の関係性、マクナマラがどういう人物か、果てはニクソンのパラノイアの事までも分かった上で観た方が良い気がする。
もちろんウォーターゲート事件の事も知っていないと、ラストシーンの意味すら分からないわけだし。
そういう意味では割と淡泊な印象も受ける作品だった。
円柱野郎

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