踊る猫

ライフ・イットセルフ 未来に続く物語の踊る猫のレビュー・感想・評価

3.4
なるほど退屈はしない。ジェットコースターに乗っているかのようなスピード感はある。悪く言えばストーリーの語り口に淀みがなさすぎて、「タメ」がない。サミュエル・L・ジャクソンのお調子者のナレーションに始まって、「信頼できない語り手」という脚本のタイトルが出てくるあたりは相当に計算されて書かれたことが伺えるスジだが、技巧だけで言えばなるほどタランティーノであったりイニャリトゥであったりの向こうは張れているのではないかとは思う(褒めすぎか?)。だが、ここからは妻を亡くしたあまり奇行に走る脚本家の「トラウマ」も、目の前で交通事故を見てしまった子どもの「トラウマ」もさほど生々しいものとして浮き上がってこないし、隠し味として仕込まれている「死とはなにか?」という問いの重みも浮かび上がらない。両親の愛を知らずに育った子どもの孤独も、対照的にすくすくと育った垢抜けない青年の朴訥さも生々しく感じられないのだ。映画が高らかに謳おうとしている「ライフ・イズ・ビューティフル!」というメッセージが白々しく感じられ、シオシオのパー……な余韻が残る。
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