mimitakoyaki

ハートストーンのmimitakoyakiのレビュー・感想・評価

ハートストーン(2016年製作の映画)
4.2
気になりながらも見逃してしまったこの作品、アイスランド映画なんですね。
海や切り立った崖、広大な牧草地、大きな空…、アイスランドの自然がとても美しく雄大なんですが、この作品はこんなに広いのにどこにも逃げ場がない、閉塞した田舎で育つ思春期の少年達の物語です。

監督はグズムンドゥル・アルナル・グズムンドソン。
日本語で言えば吉田義男みたいなもんでしょうか。
気になる名前です、覚えておこう。

この作品、ヒリヒリするほど繊細に思春期の少年少女を描いていて、この描写がとても丁寧で素晴らしかったです。

体と心が急激に変化し、自意識が膨らみ性に目覚める年頃。
友達に対しても、ただ一緒に遊んだり悪ふざけし合う関係から、内面にも目を向けるようになる。
そして自分の中には、誰にも触れて欲しくないコンプレックスや失敗体験があったり、家庭の事情を抱えてたり…。
しかも、それがとても狭い人間関係しかない田舎であるがために、すぐさまみんなに知られてしまう恐ろしさもあり、逃れようのない田舎で息苦しさを抱えた大人達の事も見てるんですよね。

女の子の早熟さとか男の子の純情さとか、とても瑞々しく、幼馴染でいつもつるんでたソールに対して、恋のような気持ちに気付き、自分のセクシャリティに困惑して思い悩むクリスティアンの内面が、セリフよりも視線や表情やしぐさ、手つきなどによって伝わってくるのも秀逸です。

クリスティアンがソールの全てを理解したり受容しようとするところが、とても切なくて、ソールに気になる女の子が出来た時に、自分の気持ちとは裏腹に後押ししようとしたり、ソールの恥ずかしい失敗もバカにしたりせずに引き受けたりとか、ソールのこと大好きでほんとに大切に思ってる気持ちが痛いくらいに伝わってきました。

こんな田舎で自分がゲイである事が知られるなんて、恐怖でしかないと思うんです。
その恐怖から逃れようとしたクリスティアンを、大切な友達として友情を守りクリスティアンに伝えようとするソールにもグッときます。

ソール役の子が少年時代のリバー・フェニックスを彷彿とさせる端正な顔立ちで、小柄なソールに対して少し大人びた雰囲気のクリスティアンも美少年だし、この役者の演技も醸し出す雰囲気もとても良かったです。

田舎の閉塞感や、思春期の残酷さ、生と性と死の生々しさを、潰されるカサゴや腐る魚、犬に噛まれて殺される羊などの動物でも表現しているところも印象的で、カサゴはみんなとは違う異質で醜い存在として描かれていたと思います。
冒頭で唾を吐かれ潰されて捨てられたカサゴも、最後では海で息を吹き返して泳いだというところも、この少年達のメタファーとなってるのを感じました。

この監督の作品、これからも楽しみにしたいです。

3
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