滝和也

嘘を愛する女の滝和也のレビュー・感想・評価

嘘を愛する女(2018年製作の映画)
3.5
嘘、知らなければ
良かった真実。

知ったからこそ
変わる現実。

変わる現実が本当の心
を気づかせてくれるなら
それは素敵なことかも
知れない…。

「嘘を愛する女」

5年暮らした男が倒れた。意識不明となった彼は名前も職業も全て、嘘だった。彼は誰なのか、何故そんな嘘を…。一人残された女は愛した彼の真実を探そうとする。

ミステリ仕掛けのラブストーリーです。探しているものが実は違っていたと言うお話なのかもしれませんね。ただ単に長澤まさみに会いに来た私はラッキーだったと思います(笑)

敢えて言えば、この作品をミステリやサスペンスにカテゴライズしてしまうと評価がかなり低くなりそうです。カテゴライズするならラブ・ファンタジーです。

探しているものは彼が誰であるかや彼の過去と言う真実ではなく、彼が本当に愛していたかでもなく、本当に彼を愛し、理解しようとしていたかです。そして何より何が大事だったかなのでしょう。

一緒にいた細やかな幸せな時間が彼女に語りかけてきます。その時間の意味を。

ある意味、監督や脚本家に騙されていると言う点ではミステリかもしれません。ラストまで集中して見なければいけない点もミステリを模倣していますから。そこは決して嫌いではありませんでした。

ただ…そこに至るまでの起承転までが中々辛い部分が多いんですよね。彼の正体や気持ちがわかるまでの間に、長澤まさみ演じる主人公は貶めざる得ない存在だからです。それ故ラストの気づきが効いてくるんですが…。

自分中心で怒りやすくて、甘えるばかりの女性である主人公をその要素を残しながら、少しづつ変えていく作業は演出的に難しかった様です。中盤の、テンポが落ち、ウザさ故に気持ちが入り込み難くしているのはその点で演出が試行錯誤している様に見えました…。

また序盤に無理やり詰め込まれたかの様な異分子、川栄李奈の存在も違和感しかないため、イラ付きを加速させますし。後半空気になってくれて良かったです。

ラストまで行くには上記の様なハードルがあって、辛さがあるのですが、吉田鋼太郎が演技面で引っ張ってくれている気がします。ただ彼のエピソードが挟み込まれ、真実を知らない方が良いかも知れないと言うレトリックを入れてきますから、こちらもトリックやハードルの一部なのかもしれません。

長澤まさみのキャラクターは活かされていると思います。彼女は普通なんですよ。普通の人が普通に考えるキャラは馴染みます。笑顔が似合い、クダを巻き、悲しければ泣き、怒る。騙されてしまうし、女の性的な部分も感じさせる。これが綾瀬さんや深田さんと違う所かもしれません。ただ役柄として、今作はラストまで行かなければ、その良さを実感しづらいのが難ですね。

ただ少し思ったのは…

人は今生きている時間が本当に幸せだと感じるのはそれが過ぎ去った後であると…。失くして見てわかることが沢山あるんだろうなと感じます。年を取ると実感はあるものの、中々難しい。今側にいる方を大事にして行くべきなんでしょうね…。

騙されてませんように(笑)

追記 超合金を踏むと怪我します。
川栄李奈のソバットも気をつけましょう。
滝和也

滝和也