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心と体とのalmosteverydayのレビュー・感想・評価

心と体と(2017年製作の映画)
4.0
光の中で静かに微笑む天使のようなメインビジュアルに目を奪われ、一切の予備知識を得ぬまま鑑賞しました。これは、とてもよいSF(すこし ふしぎ)…!

あちこち端折ってざっくりあらすじをまとめるとすれば、心がままならない女と体がままならない男とがなかなか距離を縮められずにあれこれ頑張ったりへこんだりするもどかしさを愛でるお話、と言えるでしょうか。その目線は終始静かで整然としていて、見えないものを見ようとして目を凝らしたり飛び散る血しぶきを遠く視界の外へ追いやろうとするカメラワークはそのままそっくりヒロイン=マーリアの視点そのもの。とても美しかったです。

ひとたびカメラがズームするとスクリーンの肌理まで顕になってしまうほど肌も目も髪も何から何まで色素の薄いマーリアは、まるでおとぎ話のお人形のよう。ちょっとした雑談や世間話が苦手で人付き合いに疎く、異様なほどの記憶力を有しルールに厳格で感じたことをそのまま口に出してしまう彼女は同僚になじめず、遠巻きにぽっかり浮いた存在となります。そんな彼女を「白雪姫」と呼んでしまいたくなる同僚たちの気持ち、それもまたすごくよく分かる。分かるのがつらい。せつない。

説明的なシークエンスを極力排除しつつ、心の動きを静かにそして丁寧に追う展開は密やかながらもスリリングでとても見応えがあった、のだけれど、少々物足りなかった点がひとつだけ。ふたりが同じ夢を見ていると知るに至った原因たる騒動が、その後なんの広がりも見せぬまま尻すぼみに収束してしまったのにはあれ?こんだけ?と少々肩透かしを食らいました。そこからさらに二人の仲に多少なりとも影響を及ぼす展開を想定していたのにな。これでは単に、展開上必要なだけのイベントに過ぎないではないですか。ここだけちょっと残念。

序盤ではスパイスボトルを自分とエンドレに見立てて会話のシミュレーションを試みていたマーリアが、恋する自分に気づいてからはレゴを用いて何とか会話を組み立てようと奮闘する姿がコミカルでいじらしくてちょっと泣きそうになりました。ラストシーンで気さくに笑う姿を見たら、あらためて涙がにじんできてしまった。とても良かったです。
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