yukihiro084

しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイスのyukihiro084のレビュー・感想・評価

4.8
あたたかく、しあわせ。

モード・ルイスは手足に障がいが残り
歩くのも遅い。だからゆっくり
カナダの味わいのある街並みを行く。
見えていた景色が違っていたのかもしれない。

よく息子を連れて散歩をする。
見知らぬ駅に降りて(探検だ!)と言って、
2人で知らない街を歩く。
家の近所でも(この木は何の木かな?)と
思っていたのものが、ある日花が咲いて
実がなって、わかって嬉しい気分に
なることがある。
この国は、歩くだけで季節がわかる。

冬の終わりに梅が咲き、
3月の終わりに桜が咲き、
4月の終わりにハナミズキが咲き、
ツヅジやサツキ、紫陽花が梅雨を知らせ、
サルスベリは、百日紅と呼ばれ、初夏から
夏の終わりまで、可愛い花を咲かせる。
金木犀の匂いが秋を知らせ、
あとひと月もすれば落葉樹が紅葉、
黄葉して冬の到来を知らせる。

モネの傑作に(かささぎ)と言うのがある。
一面の雪景色を描いたほぼ真っ白な作品。
でも、よく見ると、白い雪の中に、
いろんな色が溢れていて、暖かみのある
作品になっている。

モード・ルイスが(どんな景色)を
見ていたのかは知らない、でも
ほんのちょっとだけ理解は出来る。

カナダを代表する素朴派の画家モードと
彼女を支えることになるエヴェレット。
サリー・ホーキンスとイーサン・ホークの
渾身の芝居がとにかくとにかく素晴らしい。
小さな小さな家で共同生活を始めた
街のはみ出し者の2人は、何度も何度も
衝突を繰り返す。垣間見えるやさしさと、
1人で生きてきた譲れないプライド。

人よりゆっくり歩くから見えてくるものは、
何も景色だけではない。
エヴェレットのやさしさや善人さだって、
彼女は最初からちゃんと見えている。

素敵なラブストーリーでした。
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