エソラゴト

デトロイトのエソラゴトのレビュー・感想・評価

デトロイト(2017年製作の映画)
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1967年、米国ミシガン州でのデトロイト暴動の最中に発生したアルジェ・モーテル事件の全貌が明らかにー。

自分が持つ漠然としたデトロイトのイメージは、アメリカ自動車産業の中心地として過去に栄華を誇っていたこと、そしてアメリカ随一の犯罪都市であること…

その荒廃ぶりを描いた作品としては『グラン・トリノ』、最近では『ドント・ブリーズ』だったり、更に最も極端な様相は近未来SFではありますが『ロボコップ』だったりします。

キャスリン・ビグロー監督はここ近年、混迷を極める中東を題材とした社会派作品を撮ってきましたが、今作はアメリカ国内の出来事でしかも50年前の実話を基にしたドキュメンタリータッチな作品。(構造的には前作『ゼロ・ダーク・サーティ』に似ています)

暴動とはいえ軍隊まで出動する騒乱はまさに内戦状態。極限状態下の人間の深層心理や行動原理を暴き出すビグロー監督の鋭い眼差しと手腕は今回も手抜かりも手加減もなし。その為か鑑賞にはかなりの苦行が強いられます。

50余年も前の事件なのにここ最近の出来事だと普通に語られても何の違和感も既視感もないのは、アメリカ社会が根本的な部分では何ら変わっていない、逆に悪化の一途を辿っている事の証拠なのかもしれません。

今作はデトロイト暴動で起こったある事件の全貌を明らかにする事を主眼に置かれていますが、そんな中この事件をきっかけに人生の歯車が狂い出すも、今現在も己の信念を貫き通すある黒人シンガーの姿も描きだされています。

その揺るぎない確固たる姿勢には胸が打たれましたし、全編に渡って救いの無いこの物語の唯一の希望の光だと感じました。