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グッバイ・ゴダール!のカツマのレビュー・感想・評価

グッバイ・ゴダール!(2017年製作の映画)
3.9
メガネのレンズが割れるたび、二人の愛にヒビが入っていくような気がした。むしろ、それは愛と呼べたのか分からないけれど、妻の目線から見たゴダールは確かに彼女のことを愛しているはずだった。だが、彼女の脳裏にはクエスチョンばかりが浮かび、拗らせ続けるカリスマはあまりに理解の範疇を越えていた。それは二人にとって激烈なる動乱の時代、5年も夫婦関係が続いていたのがもはや奇跡だったろう。

ヌーヴェルヴァーグの旗手ジャン・リュック・ゴダールが商業映画から決別し、政治色を強めていった時期に彼のミューズとなった、アンヌ・ヴィアゼムスキーの自伝小説を映画化。アンヌは『中国女』の主演など、数本のゴダール作品に出演し女優として活動。その後は小説家としても活躍した。そんな彼女自身が懐かしい日記を捲るかのように、混沌の日々を回想した長すぎた五月の記憶。

〜あらすじ〜

1967年、ゴダールは新作『中国女』の主演にまだうら若き女子大生だったアンヌ・ヴィアゼムスキーを起用。二人は公私ともにパートナーとなり、ゴダールとアンヌは結婚する。だが、『中国女』の評判は微妙で、ゴダールは映画人としての過渡期を迎えていた。
その頃、フランスはドゴール政権への反発から学生運動が苛烈し、ゴダールとアンヌもこれに参加。その影響もあり、ゴダールは商業映画からの決別を宣言し、より政治色を強める発言は過激なものになっていった。アンヌはそれでも彼の横に居続けようとするも、口を開けば周りの人間と口論に発展するゴダールに辟易し始め、次第の彼女の顔からは笑みが少なくなっていった・・。

〜見どころと感想〜

2019年、未だ存命中のゴダールだが、アンヌ目線から見た彼は強烈な拗らせ、独占欲、嫉妬心、過激思想への傾倒など、一言で言うとどうしようもなく面倒臭い人間であった。よくぞ5年も夫婦関係が続いたものだと思うし、アンヌ自身にゴダールを変えるほどの影響力は無かったという切ない捉え方もできたが(事実その後のミューズとなったアンヌ・マリー・ミエヴィルの影響力は大きかったように思える)、まだ若かった彼女の精一杯の愛し方だったのだろうと見えた。

細身美男のルイ・ガレルが薄毛になってまでゴダールを熱演!アンヌはルイの父親フィリップ・ガレルの作品に出演もあるため、その縁もあるのかもしれない。そして、アンヌ役を演じたのはステイシー・マーティン。彼女のファッションから佇まい、表情まで全てが魅力的に撮られていて、実在のアンヌに負けないほどの美しさを放っていた。激動の時代を駆け抜けた二人。そこには歪ながら前に進むためにもがき続けた二人の姿があって、どうしようもなく不器用な日々が綴られていたのだった。

〜あとがき〜

とにかくゴダールが最悪です。正に性格が最悪。気難しい人というイメージはあったので、こんな感じだったのかなと思いますが、とにかく周りにいてほしくない人間の典型ですね(笑)
そんな胸糞ゴダールですが、どうしようもないシーン、しょうもないシーンになると突然軽快なポップソングが流れてきてコメディになってしまうという、重さを感じさせないところも魅力的な作品だったかなと思いましたね。
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