臓器提供及び移植を題材としたヒューマンドラマ。
青を基調とした映像が美しい。
冒頭の溌剌とし奔放な少年たちの街から海までの疾走、
そして波に揉まれるダイナミックなサーフィンのシーン。
少年たちのはずんだ息遣いや鼓動が伝わる、命の煌めき。
風力発電が音もなく回る一本道が海で覆われる夢。
生命の力強さが画面全体に迸った後で
喪失と再生の物語が始まる。
ドラマとしての演出は、正直苦手な部分もいくつかあったが
ひとつの心臓を巡っての人間模様の描き方はとても誠実なものだった。
少年の両親、医師、看護婦、少年の恋人、移植コーディネーター、そして移植を待つある人物とその家族。
無関係だからと切り捨てず丁寧に彼らの内面も描写し
やがてひとつの心臓へと結びつけていく循環の図。
命のバトンなんて陳腐な表現はしたくない。
少年の瑞々しく躍動する肉体に包まれた
小さな心臓と夜明けの海。
青い海原は命の連環の象徴と気づく時
また夜明けは訪れ
朝の光に涙が輝く瞳は
魂が還った海のようだった。
じゃあね、と市電のホームで別れた後
坂道を自転車で全力疾走し
次のホームに先に着いて
恋人を待つ少年。
あの時どれだけ彼の胸は高鳴りはずんでいたんだろう。
移植前に、医学的には死んでいる少年の耳に
そっとあてられるさよならの言葉と波の音。
命に寄り添う尊さに心洗われてからの
エンディング
David Bowie「Five Years」は
あまりに胸に刺さる。