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シェイプ・オブ・ウォーターのTEPPEIのレビュー・感想・評価

4.8
ひと足先にカナダにて鑑賞。すでに賞レースを独走しているギレルモ・デル・トロ最高傑作と声も上がっている「シェイプ・オブ・ウォーター」は噂どおり、デル・トロの集大成とも言える作品になっている。予告編からも反響を呼んでいた映像美と、デル・トロが描くラブ・ファンタジーともあって期待が高かったぶん見事応えたといえる。オリジナル・バージョンはR18相当なので日本ではR15バージョンとして一部映像処理して公開するそうだが、処理部分によってはかなり魅力を損なうのではないかと心配するほど映像のシークエンス、ひとつひとつが美しい、明るい、暗い、ロマンチック、エロチックなどとにかく作品全体がエモーショナルである。しかも非常に映画ファンをくすぐるオマージュや、デル・トロのクリーチャーセンスも上々だ。なんと言っても脚本が贅沢というか、笑いあり、涙ありで60年代を舞台にしているあたり現代でも受け取れる論争的なテーマが秀逸。台詞多々ではなく映像表現が巧みで、魚人と1人の女性の関係を軸にしているため、設定上はかなり省いていることが多い
。それ以前に切ないファンタジーとしてこの作品に向き合うだけでなく、本作の純粋さをどれだけ汲み取れるかにもよるだろう。クリーチャーデザインに関しては「ヘルボーイ」に出てきたよなコイツと突っ込みたくはなるが、サリー・ホーキンスの豊かな表情と微笑ましく、時に感情的な演技に圧倒される。リチャード・ジェンキンスもこの作品に面白みと笑いを取り入れ、イライザに寄り添う隣人として、彼女の理解者であり、そして彼の演技は最も不可欠な存在となった。その点ではオクタヴィア・スペンサーも妥当だろう。彼女のキャリアが積み重なってユニークなキャラクターに仕上がっており、一瞬くどそうなラブ・ファンタジーに毒を吐いている。
様々な面白みや試みがデル・トロの創造性を構築しており、なんだか終始微笑ましいし、切ないし、色んな感情が交差して目が離せない出来であった。もし映画が日本で賛否両論になるとすれば、その理由はこのあたりだろう。とにかく期待した内容と違う…では困る。この映画を観る際に必要なのは純粋さそのもの。監督のギレルモ・デル・トロは映画への情熱をぶつけてきたと言ってもいいぐらい、細かい映像表現と挑戦的なテーマをロマンチックにしてしまうのだから彼の魔法は本物だ!
総評として「シェイプ・オブ・ウォーター」は観客をまさに不思議な時間を過ごすということ。とても懐かしく感じる…でも全く新しい映画を楽しんで欲しいと思う。
オスカー作品賞と監督賞はまず間違いなし。
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