koya

シェイプ・オブ・ウォーターのkoyaのレビュー・感想・評価

4.5
この映画がもともとは『美女と野獣』を想定していたという話がありますが、この映画の王とヒロインは、アマゾン川の謎の生物と声が出ない清掃係の女性。

映画は冒頭10分が大事だと思うのですが、この映画は、オープニングがとても凝っていて、音楽も映画に誘うようで素敵。
水の中でゆらめく部屋。カメラはゆっくりと部屋の中に入っていく・・・

時代は1962年、今から55年前。アメリカとソビエトの冷戦時代。
孤児の女性、イライザ(サリー・ホーキンス)は、子供の頃の傷から声帯を痛め、声がでない。
当然、できる仕事は深夜の清掃係。夜12時から朝の5時まで、国の秘密研究機関の清掃をしている。

そこで見てしまった、アマゾン川で捕獲されたという「謎の生物」
声の出ないイライザと冷戦の為の解剖実験に使われそうになる謎の生物との間に、少しずつ親近感が出てくる。
しかし、アメリカ側、ソビエト側・・・双方からの思惑が2人の友情を引き裂こうとする。

観終わってみると、ストーリーはシンプル。
けれど、映像、特に色合いが深い色で海底に沈んだような静けさがあります。そして、イライザは映画館の上に下宿しているのですが、カメラはなめらかに部屋から映画館へと動いていく。

わかりにくい複雑な謎や、もやもやの残る中途半端さはないけれど、派手な娯楽でもない映画。
私は何よりもこの映画の残す押しつけがましくない寂寞感が好きです。

イライザは、深夜の清掃の仕事なのに、出かける前にハイヒールを念入りに磨いて靴をピカピカにしている所が良かった。
汚い底辺の仕事かもしれないけれど、イライザは磨きぬいたハイヒールで仕事をするのです。仕事に誇りを持っているってわかる演出でした。
koya

koya