鍋レモン

シェイプ・オブ・ウォーターの鍋レモンのレビュー・感想・評価

4.7
⚪概要とあらすじ
「パンズ・ラビリンス」のギレルモ・デル・トロが監督・脚本・製作を手がけ、2017年・第74回ベネチア国際映画祭の金獅子賞、第90回アカデミー賞の作品賞ほか4部門を受賞したファンタジーラブストーリー。

1962年、冷戦下のアメリカ。政府の極秘研究所で清掃員として働く女性イライザは、研究所内に密かに運び込まれた不思議な生き物を目撃する。イライザはアマゾンで神のように崇拝されていたという“彼”にすっかり心を奪われ、こっそり会いに行くように。幼少期のトラウマで声が出せないイライザだったが、“彼”とのコミュニケーションに言葉は不要で、2人は少しずつ心を通わせていく。そんな矢先、イライザは“彼”が実験の犠牲になることを知る。

⚪キャッチコピーとセリフ
“愛が溢れ出す”

「もし私たちが何もしなかったら、私たちも人間じゃない」

⚪感想
ラブストーリー作品。

丁度本作の小説を読んだらあまりの面白さに映画も観なきゃという気持ちになってDMMTVに課金して鑑賞。

美しい。語彙力を奪われる。

本作は文学と映画という2つのメディアで段階的にリリースされたらしい。
小説版はかなり分厚く600ページ弱あるだけあり、映画より事細かに描かれていると感じたので映画が好きと思った方には是非とも小説を読んで欲しい。
ストリックランドの異常さ、ホフステトラー博士がなぜあの状況に陥ってしまったのかが分かるし、ストリックランドの妻との繋がり、ゼルダの行動の違いなど比べるのも面白いと思う。逆に本を読んでいなかったら理解できていなかった部分多すぎるぐらいの感じ。

小説版は“彼”がとても煌びやかで感情に合わせて光る色を変えている感じがしたが、映画版は表情が描ける分、それだけで表現していたように感じた。逆に考えればピンクとか緑に光っても逆に映像ではチープになってしまう気がする。

小説を読んでいる時にもイライザはサリー・ホーキンスを思い浮かべていたが、彼女以外は想像がつかないほどハマり役。当て書きなのかな?
サリー・ホーキンスの感情表現がとても好き。声は出せないが空気とともに出る音、表情、動きだけで喜びや悲しみ、怒り全てが伝わってくる。
外見だけでなく内面の美しさも伝わってくるそんな人。
『しあわせの絵の具』や『パディントン』の演技もとても好きだった。

登場人物に限らず研究施設や部屋の構造、街並み、仕草が小説で読んでいた通りそのままに描かれるのが不思議な感じがした。やや相違点もあるがほぼそのまま。けど小説で表せない部分を映画が表現していた。

人間とそれ以外の恋愛といえば、『美女と野獣』や『人魚姫』が有名だけど私が許せないのは美女と野獣の野獣は人間に変わってしまうし、人魚姫は泡になって消えてしまうことである。確かにどちらも美しさはあるがどこかモヤモヤしてしまう。だからこそ本作は納得のいくものだった。

字幕は「ガールズトーク」なのに吹き替えだと「井戸端会議」になっていて急にトイレでの女性たちの楽しそうな会話が便所でのおばさんたちの話みたいな雰囲気を感じて笑った。

サントラがめちゃくちゃ良い。



⚪以下ネタバレ



小説ではストリックランドが“彼”を捕まえに行くまでの物語があるし、ストリックランドが神経質なのはホイト元帥の圧や“彼”を捕まえるまでの生活によるトラウマ、レイニーという妻が関係している。映画ではほぼ語られず、“彼”は既に捕えられ、ホイト元帥は2、3回普通に逢いに来ていたし、レイニーも2、3回の登場で終わる。レイニーはジャイルズとの関わりがあったし、イライザとも恐らくバスで乗り合わせていたので描くのかなと思ったけど時間的に無理だったっぽい。残念。

イライザに欠かせないのは靴だがこちらも小説とは違っていて、靴を磨くシーンはあり、自分がずっと眺めていた靴を最後に買って履いていたが銀色ではなく赤だった。確かに映像だと赤が映えるから致し方無し。

ホフステトラー博士はロシアのスパイなのだが映画では分かりにくいし、両親を手玉に取られていることは特に勝たられないのだなと思った。渡された注射器も小説ではイライザに渡すが、映画では警備員に打ってしまう。

小説、映画でも気になったのはイライザの首の傷。口が利けない=人魚姫を想像させるし、それゆえイライザの首の傷は元々エラで人魚や“彼”と同じような生き物だったのではないかと思ってしまった。

映画だけのイライザの『ク・タ・バ・レ』というストリックランドへの手話やジャイルズと過ごす日々がほっこりした。

自慰シーンや全裸、猫頭から食べれる、指もぎ取り、銃弾頬を貫く、空いた頬に指を入れ引き摺るなどのシーンがあるのでカップルや家族で見たら気まずそう。

⚪以下ストーリー(Wikipediaから引用)
1962年の冷戦下のアメリカ。発話障害の女性であるイライザは映画館の上にあるアパートでただ独りで暮らし、機密機関「航空宇宙研究センター」で清掃員として働いている。アパートの隣人であるゲイのジャイルズ、仕事場の同僚で不器用なイライザを気遣ってくれるアフリカ系女性のゼルダに支えられ、平穏な毎日を送りながらも、彼女は恋人のない孤独な思いを常に抱えている。

そんな日々のなか、宇宙センターに新メンバーのホフステトラー博士が一体の生物の入ったタンクを運び込む。普段はイライザに不遜な対応を見せる軍人ストリックランドが、生物を邪険に扱った報復を受けて指を失う騒ぎがあり、清掃のために部屋に入ったイライザは初めてその生物を直視する。生物は「半魚人」と呼べる異形の存在だったが、独特の凛々しさと気品を秘めた容貌をもち、イライザの心を揺り動かす。彼女は生物に好物のゆで卵を提供し、手話を教えて意思の疎通をはかる。ふたりは親密な関係となってゆく。

生物が運ばれてきた理由がやがて明らかになってゆく。アマゾンの奥地で神として現地人の崇拝を受けていたという生物を、ホフステトラーは人間に代わる宇宙飛行士としてロケットに乗せようと提案する。それに対しストリックランドは、生体解剖でこの生物の秘密を明らかにすべしと主張し、上官の同意を得る。これを知り動揺したイライザは、ジャイルズやゼルダに自らの思いを打ち明け、生物を救うために手を貸してほしいと懇願する。一方ソ連のスパイだったホフステトラーは、アメリカが生物の秘密を知って宇宙開発の優位に立つ前に、生物を殺すよう政府に命じられる。だがホフステトラーは貴重な生物を殺すことに反対する。

イライザはジャイルズ、ゼルダ、ホフステトラーの協力を得て宇宙センターより生物を救出し、雨で増水した日に彼を運河から水中に返す計画を立てる。そしてその日まで彼女は、生物を自分のアパートに隠して暮らす。他方、ホフステトラーは命令不服従によりソ連スパイに撃たれ、その後ストリックランドから拷問を受けて絶命する。ストリックランドはホフステトラーの最期の言葉から、ゼルダとイライザが救出を実行したと知る。

ゼルダの家へ向かい彼女を尋問するストリックランドに、ゼルダの夫はイライザが関わっていることをバラしてしまう。ストリックランドはイライザの家を目指し、彼女の身の危険を感じたゼルダは電話で逃亡を指示する。

イライザとジャイルズは生物を運河の水門に連れてゆき、別れを告げる。その時、後から追ってきたストリックランドが生物とイライザに向けて発砲する。イライザは意識を失うが、一命を取り留めた生物はストリックランドを倒すと、イライザを抱え海に飛び込む。

生物の驚異的な治癒能力で蘇生したイライザは、彼と共に海の中で幸せに暮らしてゆく。

⚪鑑賞
DMMTVで鑑賞(字幕)。(231019)
DMMTVで鑑賞(吹き替え)。(231020)
鍋レモン

鍋レモン