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シェイプ・オブ・ウォーターのtjZeroのレビュー・感想・評価

3.9
冷戦下のアメリカ、ボルティモアの軍研究所。
清掃の仕事に就いているイライザは、南米から運びこまれた謎の水棲生物と心を通わせるようになる…。

本作を観たいと思ったのは、デル・トロやアカデミーというよりも、ポスターのインパクトでした。
水中で抱き合うふたりのシルエットの美しさが、強く印象づけられます。

ヴィジュアルのインパクトって意味では、まず思い出したのが『アメリ』でした。
世の中からとり残されたようにひっそりと暮らすヒロインと、彼女を支える老いた隣人っていう設定も似ています。

『アメリ』のヴィジュアルは緑と赤が印象的でした。
夢見る乙女のポップなクリスマス・カラー。

対する本作のキーとなる色彩は、緑と青。
中年女性であるイライザの落ち着いたたたずまいと、ブルーカラーの哀しみを現しているかのよう。

そんな彼女は発語に障がいがあるため、半魚人の”彼”との交流も言葉を介しないものとなる。
そのため、映画全体にどこかなつかしい、サイレント映画のようなぬくもりもあります。それこそ、チャップリンの『街の灯』みたいな。

彼女の性欲とか、彼の凶暴さとかもちゃんと描かれ、”きれいごと”に終わっていないのがいいと思います。
ディズニーでは物足りない、大人のためのファンタジーでした。
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