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オー・ルーシー!のRのレビュー・感想・評価

オー・ルーシー!(2017年製作の映画)
4.6
悲惨の二字です。こんな痛々しい映画をみたの久しぶりです。平凡な弱小会社で平凡に働く平凡な独身のおばさん節子は、風邪で体調不良をおしての出勤時、駅で電車を待ってると、背後にいた男が突然走り出して線路に飛び込む。という強烈なシーンから始まります。そこから、ただ淡々と、笑うに笑えない、けど笑わずにはいられない、とんでもなくブラックなコメディーが展開していきます。節子の会社では、これから退職を迎える終わりかけのおばさんたちと、これからおばさんへと向かう小賢しい若者の間の断絶が描かれる。その道以外にどこへも向かえない閉塞感。節子の姪は、ポイント制の英会話レッスンを受講してるんやけど、どうしてもお金が必要な状況になってしまってて、ポイント分の返金はできないけど譲渡できるので、おばちゃん、代わりに受講して、お金わたしにくれない? 60万円分…… とりあえず体験レッスン受けてみてよ、と行ってみたレッスンの先生がジョシュハートネット演じるジョン。むっつり無口な節子は藪から棒に金髪のカツラをかぶせられ、君の名前はルーシーだよ! ハーイ、ルーシー、マイネームイズジョン、ハーイ、マイネームイズルーシー、からの優しく力強いハグ。うわー。何年振りなんでしょう、男の体温を感じ、男の匂いを吸い……ぬくもりで心がじわー。うっとり。おばちゃん、英会話やってみるわ。えーーーほんとーーー!!! ありがとーーー!!! そして、後日、ふたたび英会話へ行くと……ジョンはアメリカに帰りました、新しい講師を探すのでちょっと待ってくださいね。呆然と教室を出ると、何と、姪がジョンとキスをして、タクシーに乗って去っていくではないか。脱力する節子……彼女は、自分の姉(姪の母)を連れて、駆け落ちした姪を追い、アメリカへと旅立つ……という流れで、この時点でもうすでにだいぶきっついな、と思ってるのがどんどんどんどんキツイキツイキツイイタタタタタタタタタタえぐいえぐいえぐい😖って感じになっていきます。いよいよやばいのが、マリファナ→はずみのセックス→タトゥーの展開。そのあとのI can’t!は、エグすぎるけどおかしすぎておもわずぶーーーーと食ってたもん吐いて爆笑🤣🤣🤣ヒィヒィ言いながらわろてまいましたけど、同時に胸が痛すぎて🥲 こんな感情味わうのはじめてやわ。特にセックスシーンのうわーーーーーってなるハラハラはすごかった。だらしなく痛々しい喘ぎ声の不快な悲しさったらない。僕は個人的にジョシュハートネットにぜんぜん魅力を感じないので、本作のイチ推しはタトゥー屋のにいちゃんです。カワイイですよ、彼は、とても。そして、もうひとり、忘れてならないのが役所広司演じるトムくん。最初登場するときは、えっ、ついに広司くんもそっち系の役を⁈と思ったら、ふつーにストレートでした笑 ひどい勘繰りをしてしまいました。前半は、まぁほんまに気持ちの悪い、おかしな男だなーと思ってたんやけど、後半でぜんっぜん印象変わって、んー、なかなかいい男じゃないかってなります。てか、まずはジョン先生の授業でルーシーとトムとがいっしょになるんやけど、アメリカ人と比べたときの日本人のぎこちなさと言ったら! ありえませんね。日本人の自信のなさとコミュ障のレベルって群を抜いてるわ。まぁそれは置いといて、トムくんにまでがっつくルーシーの節操のなさは絶望的。砂漠のように干からびきった女心の惨めさを、ここまで描破してしまうとは。いろいろ面白い演出あったけど、やっぱいちばん印象的なのは電車。冒頭のシーンがあるから、電車シーンは毎度心がざわつきます。うわって思わず声が出そうになる。僕には最後のシーンですら怖かった。本作で、欲求不満の悲惨なおばさんの成れの果てを演じた寺島しのぶという女優さん、すごかったです。こんな捨て身で、こんな末期のおばさんの末路を演じれるとは……演じててしんどくなかったのかな……そして、南果歩、見るの久しぶりすぎてびっくりした。意地悪そうな初老のおばさん役がピッタリやった。いやー。この残酷さはちょっとクセになってしまうかもしれません。また見たいような気がしている。悲しいかな、なんだかんだで日本って、こんな心象風景がどんどん広がっていってる気がしてなりません。もっと人間同士が、人間らしく、互いを愛し合い、信頼し合い、支え合い、称え合える社会を作っていくことが、日本における何より喫緊の課題なのではないか、と思います。こんな世の中では、生きていくのが苦しすぎるよ。
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