ひろ

あゝ、荒野 後篇のひろのレビュー・感想・評価

あゝ、荒野 後篇(2017年製作の映画)
3.7
寺山修司が執筆した唯一の長編小説を原作に岸善幸監督が映画化した前後編の後編となる2017年の日本映画

東日本大震災、自衛隊海外派遣、自殺問題など、原作の寺山修司の作品にはなかった現代問題を盛り込んだ内容は考えさせられる。若くして亡くなった天才・寺山修司が生きていたら今の世の中をどう面白おかしく、辛辣に表現したのだろうか。現代は病んでいる

前編では菅田将暉が演じる新次とヤン・イクチュンが演じる健二が出会い、プロボクサーを目指す青春映画の要素が濃かった。後編では人生で溜め込んできたものと向かい合うことになる。新次は父親の自殺、自分を捨てた母親、裏切った仲間と向き合う。健二は暴力を振るう父親、他人とうまく接することができない自分と向き合う

健二の決断により前編で築き上げたものが崩壊していく。それでも彼らは止まらない。人間はどんな時でも生きていかなければいけない。たくさん苦しんだ2人がリングで向き合う。拳で語り合う。それがボクシング。ラストはちょっと受け止めきれない展開だったけど、いろいろ考えさせてくれた

どの役者も個性的でユニークな演技で面白かった。菅田将暉とヤン・イクチュンの演技は必見だし、ユースケ・サンタマリアも変幻自在な役者ぶりを見せていた。尺的には長い作品だけど、現代に必要な寺山修司の精神を感じるためには見るしかないでしょ
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