フラハティ

ボヘミアン・ラプソディのフラハティのレビュー・感想・評価

ボヘミアン・ラプソディ(2018年製作の映画)
4.5
この映画をリアルタイムで観れたことを誇りに思う。


批評家から(Tomato)の評価が低く、観客からの評価が高いという、なんともQueenらしいとも言える本作。
僕はライトファンレベルで、もちろんリアルタイムも知るわけはないから、余計この映画を好きになったんだと思うよ。
コアなファンの方々とは違う視点だろうから、知らないことが多いほうがむしろ素直に物語を受け取れる。


本作はLIVE AIDをラストとし、バンドの結成からライブまでを駆け足で描いていく。
もちろんこんな偉大なバンドの功績や裏話を詰め込めば、あまりにも多すぎて映画として成立したとは言い難いし、何よりそれならドキュメンタリーで充分になる。
本作は、フレディ・マーキュリーという伝説の男が抱えていた“愛の不在”と“世間の偏見”をテーマとして絞り込んでいた。

移民としての生活。
見た目にも偏見を受けた。
そしてバイセクシャルという、当時では受け入れがたい価値観。
当時はやはり偏見もあっただろうし、並々ならない痛みや辛さを抱えていたはず。
時に仲間と笑い合い、時に独りで孤独に耐えながら、人生を全力で生き抜いた。

彼は自分の愚かさや、傲慢さを客観視することに成功し、その力がLIVE AIDで最高潮に爆発する。
残された命を削りながら、ひたむきに自分自身やマイノリティの部分と、そして何より音楽と向き合ったフレディの姿はやはり最高。
「Queenは家族」という言葉のように、フレディの周りの人々は優しく温かい。
フレディ自身も魅力に溢れていたからなんだろうけど。

最愛のQueenというバンドの仲間たち。
反抗したこともあったが理解し合うことが叶った父親。
自身のバイという価値観により、結ばれることはなかったが理解者となった元恋人。
本当の自分を受け入れてくれた最愛の友。
時代背景を考えれば、どれほどフレディが生きづらかったかは容易に想像できるし、完璧ではないからこそ、自身の葛藤から完璧なパフォーマーとして世界中に愛された姿は染みる。


映画としては、成功とその影に隠された闇という、ありきたりな題材。
駆け足すぎて物足りない感はすごいわかるけど、にわかとか全く知らないって人なら楽しめると思う。
時代考証が違うところもあるみたいで、(にわかの自分にはわからなかったけど)『アマデウス』のようなスタンスで観ればいいと思う。
Queenのバンドとしての描きだとかなり物足りないが、フレディを描いたならあり。
もちろんフレディが実際何を思っていたのかなどはわからない。
ただ、その感情は彼が歌った曲たちを聞くことでわかるし、だからこそ本作のラストであるLIVE AIDが上がる。
冒頭のライブ前のシーンから鳥肌。

並々ならぬ製作陣の熱量と、LIVE AIDの再現度の高さ、フレディを演じることになったプレッシャーを演技に昇華させたラミ・マレック。
あとブライアンのクオリティよ。
Queenの楽曲を映画館という環境で聞けることがまさか叶うとは思わなかったので、それだけでも価値がある。
映画を彩るQueenの名曲の数々。やはり力があるね。

一方的に音楽を作るわけではなく、グループで作り上げる。
観客とともにライブを作り上げる。
今までただ聞いていただけの曲たちだったけど、曲の背景というものを知ると、QUEEN というバンドが何を思い、フレディがどんな思いで曲を歌い上げたのかをより深く感じるようになった。
最後のライブでは、フレディの人生を思った選曲であるなら考え深く、あの力強いライブには誰もが感動するはず!

ここまで感動を与えるQueenに感謝。
そして何より、無事に完成までこぎ着けてくれた関係者全てに感謝。


『Don't stop me now, I'm having such a good time.
I'm having a ball.
Don't stop me now.
If you wanna have a good time just give me a call.』
『今俺を止めるな。こんなに最高なんだから。最高に楽しいよ。今俺を止めるな。もしお前も楽しみたいなら、俺を呼んでくれ!』
フラハティ

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