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リュミエール!のmimitakoyakiのレビュー・感想・評価

リュミエール!(2016年製作の映画)
4.5
吹替版で鑑賞。

わたしは映画の歴史も技術的なことも全然詳しくなくて、リュミエール兄弟のことも名前くらいしか知りませんでしたが、それでも充分に楽しめましたし、とっても感動しました。

リュミエール兄弟は、シネマトグラフを発明したことから映画の父と言われ、そこから映画の歴史が始まりました。
この作品では、1本50秒という超短編の作品が108本も紹介されています。
モノクロでサイレントの作品ですが、とにかく映像や構図の美しさに感動しますし、音もないたった50秒で描かれる世界がとても豊かであり生き生きとしていて驚かされました。

世界初の映画である「工場の出口」は、リュミエール兄弟の工場の門が開いて、工場の従業員がぞろぞろと出てくるというもので、はじめは、こんなんただの動画やん?と思って見ていましたが、そこにはちゃんと演出もされているんですよね。
まさに映画の歴史の扉を開いた作品であり、一番はじめに映されたのが働く人々だということにもグッときました。
19世紀のフランスに生きた庶民。
工場で働く人達が賑やかに楽しそうに出てくる姿を映したその作品が世界で初めての映画というのが素敵でした。

リュミエール兄弟の近しい家族、親類などが映った作品では、美しい庭やテラスでの優雅な食事風景など、豊かな生活ぶりが伺え、子どもが着てる服も上品なドレスで、まるでルノワールの絵画のように朗らかで美しく、しかし別の作品では、労働者階級の庶民や子ども達が遊びに興じる様が生き生きと映し出されてもいて、その時代に生きた人々の姿を今こうして4Kデジタル加工された素晴らしい映像で見られることにも感慨を覚えました。


そして、世界各地にカメラマンを派遣し、その国々の風景と人々を映した作品もたくさんあり、セーヌ川で船からエッフェル塔を映した移動撮影は、あまりの美しさにため息が出ました。
ノートルダム寺院の前の広場、ピラミッドやスフィンクスを背景にラクダに乗る人たちを映した作品や、NYのタイムズスクエア、ベニスの運河、チュイルリー公園、ロンドンのビッグベン、ベトナムの村の子ども達、そして日本も!どの作品もそれまでは劇映画や時代劇などで再現された街並みや人々しか見たことがありませんでしたが、その当時の世界の街や人々が完璧に計算された構図や演出によって映された映像は見事というしかない美しさでした。

ただシネマトグラフを発明しただけでなく、撮影技法や演出、美術的なセンスなど映像作家としてもとても優れているのがわかります。
まだ誰もやってないことを自分たちで創り出し切り拓いてこれだけのものを作り上げたって、天才なんでしょうね。
リュミエール兄弟の作品群は世界文化遺産になってもいいくらいの価値があると思いました。

108本もあるのに全く飽きずに惹きつけられ、たった50秒でこれだけ感動を与えられる映画の力を再認識しました。
映画という素晴らしい文化を生み出してくれたリュミエール兄弟に感謝です!

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