ベルサイユ製麺

ザ・メイヤー 特別市民のベルサイユ製麺のレビュー・感想・評価

ザ・メイヤー 特別市民(2016年製作の映画)
3.2
ソウル市の灯りを見下ろす小高い丘の上で、夜空を見上げていた若かりし日のビョン・ジョング。突然、背後の茂みから小石を踏み砕く重々しい蹄鉄の響きと熱い鼻息を感じる…。振り返ると巨体の美しい黒馬と、それにまたがる(変なヘルメットの)筋骨隆々とした大男がジョングを見降ろしている。しばし沈黙の後、馬上の男が口を開く。
「貴様、北斗七星の脇に輝く蒼星が見えるのか⁇」「일본어를 할 수 없습니다…😧」「あれは市長星!あれが見えるということは、貴様は一年以内に市長になる運命なのだ!」「예쁜 말하네요😀」
…というやりとりは劇中では省略されていますが、すべからく市長になる人というのはこの様な手続きを経ています。全員です!


地位も名誉もコネも全部有る。ソウルの現役市長であるビョン・ジョング(チェ・ミンシク)が、次期市長選を勝ち抜いての三選目を目指し奮闘。対立候補と、熾烈で卑劣な票の奪い合いでしのぎを削ります!最終目標は大統領なのだもの!
市長の補佐役、選挙対策本部長のシム・ヒョスクにクァク・ドウォン。広告業界からフックアップされた若い女性広報員パク・キョンにシム・ウンギョン。

冒頭からやられました!
現役市長の広報イベントで、チェ・ミンシクのラップ(?)が炸裂!キャップを被ってグラサンをかけたマンシクは“プライドの怪人”こと、故・百瀬博教そっくりです!
更に、ウンギョンが制作したテレビCM、出演してるのはマ・ドンソク!全編通してここにしか出ない!贅沢!!牧師姿のドンソク良いぞー!あの腕見たら2秒で告解します。身に覚えのない事まで…。
愉快な演出も相まって、前半はコメディ調。選挙戦の内幕を軽やかに描きます。ちょっとのっぴきならない出来事が起こって以降の展開はサスペンス、クライムドラマぽいですね。広報係のシム・ウンギョンは選挙の暗黒面初体験で、そんな彼女の目を通して観客は物語を追体験します。
それにしてもネガティブキャンペーンのエゲツない事よ!仮に訴えられても、印象を悪くした方が勝ち。泥沼必至!マンシクとドウォンが顔を突き合わせ悪巧みしている様はどう見ても反社会勢力です。クァク・ドウォン、相変わらずサイズ感が怖い。三つ揃いのせいで余計に…。
非常によく練られた脚本で、微に入り細に入りフィクションとは思えない作り込みに感心させられますが、個人的に非常に残念だったのはストーリーの分岐点になる二つの大きな出来事が、完全にアクシデントなんですよね…。むー、それじゃ単に運の良し悪し、人生ゲームと同じですよ。ダメっす。ダメダメ殿っす。ちょっと真面目に観て損した感が…。
結局そのままずるずると消化不良のまま結末を迎えますが、独創的で良すぎるラストのシーンと、謎めいたムードのエンド曲で有耶無耶にされて、何か良いもの観たような気分にさせられますよ。ズルイ!
いかに自分がノンポリのボウフラ風情だとは言え、一応支持政党も有れば好きな政治家も居ますので、政治家=悪とまでは思っていませんが、物語に於いて“政治家や権力者が悪い”っていうのは意外性も何にもないと思います。何か一捻り欲しい気がします。実は、ホントに悪い事してると思ってない…とかさ。

ビョン市長、日本食が好きみたいで、よく寿司とか食べてるのですが、あるシーンで納豆を食べながら「この納豆はオーサカから持ってきたんだ」とか言います。惜しい!寧ろ売って無いよー!それか“目黒のサンマ”オマージュ?全体的にやっぱ惜しいぞ!!