エミさん

少女ファニーと運命の旅のエミさんのレビュー・感想・評価

少女ファニーと運命の旅(2016年製作の映画)
3.8
実話を元に映画化したヒューマンドラマ。
1943年フランス。ナチスドイツの迫害を逃れるため、フランスの児童保護施設に預けられた13歳のユダヤ人少女ファニーと2人の妹。70人の子供達がそこで匿われていたが、戦争の激化につれて状況も変わっていき、やがて心無い密告者のせいで、その地も追われることとなってしまう。引率者のサポートを受けながら支配の及ばないスイスを目指すのだが、途中、引率者とはぐれてしまい、ファニー姉妹を含む9人の子供達だけで、スイス国境を目指して、ゲシュタポに追われる命がけの旅をすることとなってしまう。

13歳という年齢は、小さくもないし、かといって、大人でもない。実に多感で不安定な年頃だ。そんな13歳の少女が、社会的に過酷な状況下というだけでも窮地なのに、他の子供達と反発しながらも助け合って進んで行く様は、心が締め付けられる思いだった。
劇中、ある子供が、「ユダヤって悪いことなの?だったらやめちゃえばいいのに…」と投げかけるシーンがある。産まれる星はきっと自分では選べない。たまたま産まれてきた星が、ダビデの星だっただけで、それを裏切り者に仕立てたのも人間の営みの中での出来事が災いした結果だ。しかし、理不尽な権力の行使だと解っていても、何も出来ない民衆や保身の為に迎合する人々を誰が非難できよう。ただ悪しき歴史の流れを呪うだけである。生きることを許されない時代があったということは、決して消すことが出来ず、すごく苦しくて哀しい。
でも、こういう実話を色んな形で紹介してもらえると、悲惨な状況でも、戦禍を逃れて生き長らえた人が居たということがわかり、生きることに真剣な姿は、見ていて安堵と喜びが感じられて、自分が関わった訳ではないのに、何だか救いになって勇気がもらえた気がした