カルダモン

女は二度決断するのカルダモンのレビュー・感想・評価

女は二度決断する(2017年製作の映画)
4.5
三幕構成で語られる母の復讐劇。
地味なタイトルとジャケからは想像できない内容にびっくり。と同時に個人的にはかなり好みのラインで大満足の一本。

夫と子供を爆弾テロで失った母の闘いを、ハードな移民問題を背景に、重くなりすぎないバランスで描写していく。全編を通して抑制の効いた演出に好感触。第一幕目の降り止まない雨はカティヤ(ダイアン・クルーガー)が泣き晴らすと同時に止み、物語は第二幕の法廷劇、第三幕の復讐劇へと踏み出す。

結末に賛否があるのは当然として、そこに至るまでのプロセス、サスペンスや法廷劇、復讐劇の見せ方に鋭さを感じ、まんまと乗せられた次第。特にギリシャに単身乗り込む緊張感はクラシックなサスペンスの風合いで、絶妙な車間距離やデコボコの悪路や迷路のような松林のロケーションに奇妙な不安を呼び起こされる。細かいところで言うと車のサイドミラーに小鳥が止まり、一度引き返すシーンは目に焼き付いている。また、カティヤのタトゥーが彼女自身の決意とリンクして、ハンドルを切り、突き進むまなざしと意志が印象深かい。アラフォー女性の強さ、魅力は侮れず。

映画はひとつひとつの演出がとても的確で、シンプルに見せ方が上手いなという印象。ファティ監督の作品は『ソウルキッチン』くらいしか見たことがなかったが、この映画を見て追いかけたくなった。