てつこてつ

それからのてつこてつのレビュー・感想・評価

それから(2017年製作の映画)
3.0
タイトルから夏目漱石の小説と何か関係あるのかな?・・と思って鑑賞していたら終盤になって、確かな関係性が明らかに。でも、小説自体は高校時代に読んだきりなので全く内容を覚えておらず、本作の内容が小説にオマージュされたものなかどうかまでは分からず。

とりあえず、本作を初めてのホン・サンス監督チャレンジ作品としてはお勧めしがたい。彼の作品を何本も見て、良くも悪くもこの監督ならではの“クセ”に慣れた方なら楽しめる要素も多いが、他の作品にも比べて登場人物の数も限られるし、舞台設定も大半が小さな出版社の打ち合わせテーブルと限定されるので、ハリウッドや韓国の大作に見慣れた方が視聴すると、戸惑うこと必至。

主人公は小さな出版社を経営する初老の男性。ホン・サンス監督作の男性主人公物で映画監督設定でない作品を見るのは初めてかも。でも、様々な文芸作品を読みあさり、ロマンチストで感受性も豊かなキャラ設定ゆえ、唐突なまでの二度の突然の号泣シーンも笑えるネタとして活きている。

この、さほど華があるわけでもない主人公を取り囲む三人の女性はそれぞれ個性が強く、信仰心を持たぬ嫉妬に狂う妻、信仰こそ人間に一番必要な資質と論じる地に足が着いた美しい女性、虎視眈々と男との浮気関係を続けようと画策する女性・・と描かれ方が極端。

もちろん、ホン・サンス監督なので、キム・ギドク監督のような「信仰」に対する強いテーマやメッセージ性が込められた作品などでもなく、ただただ淡々と、相変わらずオチが無いストーリーが進み、そのまま終わる。

個人的に面白いなと感じたのは、まだ若い女性が既婚者の自分よりずっと年上の男性への思いを強く引きずり、三人の女性キャラの中では一番ずる賢く、それでいて一番容貌では地味という点。これ、結構、リアルだなあと。

モノクローム作品ゆえ、キム・ミニの白い肌、美しい容貌がより一層と引き立ち、監督のこの女優への愛情が強く感じられる。

かつてのウディ・アレン監督作品に主演したミア・ファロー、マリエル・ヘミングウェイの描かれ方を彷彿させる。
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