マヒロ

女王陛下のお気に入りのマヒロのレビュー・感想・評価

女王陛下のお気に入り(2018年製作の映画)
3.5
政治もわからず虚弱体質な女王・アン(オリヴィア・コールマン)に代わり、ブレーンとして動くことで実質国のトップとして暗躍するサラ(レイチェル・ワイズ)。二人は半ば共依存的な関係となっていたが、そこに没落貴族の娘・アビゲイル(エマ・ストーン)が現れ、均衡を保っていた関係性が徐々に崩れていく…というお話。

三人の女の宮廷内での愛憎劇という、ランティモス監督にしては割とシンプルな物語。いつもの突飛な設定ではないのは、知る限り脚本を本人が描いていないのが今作が初めてであるというのが大きそう。とはいえ、ヘンテコなダンスやいやらしさの欠片もない無機的な性描写など、過去作でも見られた何故か監督が好んで入れる要素もあるし、宮廷内という閉じた世界でいがみ合うのは、これまた監督が好きな「特殊なルールで縛られた人たち」という設定に当てはまり、きっちり「らしさ」は出してきている。

主要三人以外の登場人物は基本ないがしろで、男達はほぼバカ殿なキモ白塗りメイクでお高くとまった嫌な奴らばかりで、ほとんど利用されるのみで三人には見向きもされない。多用される魚眼レンズのような外側が湾曲した奇妙な視点も、中心のみ拡大されて他の存在を遠ざけるような印象を強めた。

主演の女王を演じるオリヴィア・コールマンは、個人的には『ホットファズ』の下ネタ大好き婦警さんの印象しか無かったんだけど、無能なようで強か、強情なようで豆腐メンタル、寂しがりやなようで冷徹…と、ありとあらゆる二面性を持つ複雑な人間をちょっとした表情や動作の機微でうまく演じていた。
エマ・ストーンやレイチェル・ワイズも凄かったけど、やっぱり女王が一番印象深かったかな。

単純な女性同士のドロドロいがみ合いに収まらず、全方位に毒気を振りまくようなイヤーなお話は相変わらずキレあったけど、もっと奇抜なものを見たかったかなぁという物足りなさはあったかも。

(2019.26)[4]
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