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ザ・スクエア 思いやりの聖域の708のネタバレレビュー・内容・結末

3.2

このレビューはネタバレを含みます

公開時に劇場で観たのですが、「逆転のトライアングル」のために配信で再び観ました。

全体的に淡々としながらも、長々続く押し問答やらモンキーマンのシーンやら、会話する背景でガラガラと崩れる山積みの椅子の作品の音やら、観る側をゾワゾワと不安にさせたり、不快にさせたりする要素がとても多い。公開時に昔の仕事仲間と劇場で偶然に出くわして、観終わってからランチをしたのですが、お互いなんとも言えない気分で感想を述べにくかったことを思い出しました。

現代美術のキュレーターのクリスティアン。いろんな事件の発端は、彼の無責任で自分勝手な性格が原因です。信頼と思いやりの聖域であり、誰もが平等な権利と義務を共有できる「ザ・スクエア」という展示をするくせに、思いやりなんてまったくない。貧困層やホームレスのことをどこか下に見て差別しているくせに、自分が困ったときには平気でお願いごとをしちゃうという図々しさ。盗みの疑いをかけられて親から怒られた少年に対してもさっさと謝ればいいものを、まったく謝ろうとせず。やっと謝ろうと思ったときには時すでに遅し。少年と家族はどこかに行っちゃうというね。クリスティアンの娘たちの呆れたようなシラーッとした表情が最高です。

自分の盗まれた財布とケータイのことばかりになって、クリスティアンはプロモーションの企画内容をチェックせず、結局YouTubeの問題動画がバズりまくって大問題になってしまったのも、責任を取ってチーフキュレーターを退任した後、炎上商法として成功するという流れが笑えます。

現代美術の持ち上げ方をどことなく皮肉ったような感じも最高。清掃車によって砂の分量が変わってしまった砂山の展示に、こっそり砂を加えて直そうとするとか。館内のモニターで映し出されるモンキーマンも実際にディナー会場に呼んで、セレブ気取りな連中の前でパフォーマンスさせてみたら、とんでもなく野蛮な獣でしかなくて、扱いに困ってみんなでタコ殴りして終了みたいな感じとか。美術品として持ち上げて崇めて、価値をつけているものも、ただのゴミとなんら変わらないんだろうなという感じ。

モンキーマンの役者さんは「猿の惑星」の猿役だったらしく、監督がGoogle検索で見つけて抜擢したそうです。

カンヌ国際映画祭のパルム・ドール受賞なんですよね、そういえば。そこまで凄い作品とは思えなかったので、どのあたりが受賞の理由になったのかが気になります。
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