10円様

家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。の10円様のレビュー・感想・評価

3.6
「家に帰った僕を待ってる
妻の演技見る事が
僕ら二人の愛の形ならば
それはそれでありだろう」

オープニング曲で涙腺が緩みました。
Yahoo!知恵袋の一つの質問から漫画になり、歌になり、映画にもなった静かな社会現象。
私はほぼ日Pの曲からこの社会現象にのめり込んだ口で、一時期エンドレスで聴いていました。イントロのギターソロがカッコいいとか、場面転換のピアノがソフトで良いとかもそうなんですが、歌詞が笑わせて、泣かせるのです。やがて元ネタがあるという事を知り改めて歌詞を読み込んで行くととてもステキな、多分世界の片隅にいる小さな夫婦が誰にも真似できない愛をお互いに理解している様子なのだと、薄っすら浮かんでくるのです。
私は結婚もしていないし彼女もいません。(泣)
ですが一緒にいるならこんな女性が良いと心から思います。そして私が女性なら、こんな男性と一緒にいられると幸せを感じると思います。

映画もとても良く出来ていました。コメディ色中心で行くのかと思いきや実際は真面目な人間ドラマです。シリアスな場面なのにどこか笑いの要素を孕んでいられるのは、きっと主演の二人が最高に適役だったのでしょう。夫役の安田顕は「俳優亀岡拓次」の時みたいに、少しうだつの上がらない、でも態度には出せないが考えは真剣だと言う役所を自然に演じてくれています。あんな一歩引いた旦那、ステキですよね。
そして妻の榮倉奈々は実に良い感じに年齢を重ねた女優ですね。彼女の死体が画面に出ると、やっぱり笑う。最後の方は死体でもなくなるんだけど、それでも笑う。綾瀬はるかと同系統の役者かなと思いました。

歌では結果妻が何故死んだふりをするのかは明らかにされません。夫は恐らくこうなんだと予想して全て受け入れるのです。しかし映画では妻の行動原理が幼少時の体験からきているとしています。悲しくも直向きな妻の性格には心を打たれるものがあり、もうこの映画が正解で良いんじゃないかと思えました。コメディ映画と恋愛映画の要素を持った哲学映画…なんてのは言い過ぎかもですが、役者の不祥事でお蔵入りになるかもしれなかったこの佳作を、ゆるい気持ちで皆さんに観てもらいたいです。

そしてほぼ日P featuring初音ミク
「家に帰ると妻が必ず死んだフリをしています」
も、映画を補填する感じで聴いてもらうと、感動が2倍、いや2乗になる事は間違いない!
10円様

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