すずき

テリー・ギリアムのドン・キホーテのすずきのレビュー・感想・評価

3.8
スペインにて、ドン・キホーテをモチーフにしたCM映像を撮影中の監督トビー。
しかし撮影はトラブル続きで遅遅として進まなかった。
トビーが学生時代に撮った映画もドン・キホーテで、彼は気分転換に、そのロケ地だった村を訪ねる事にする。
トビーは主演にかつて起用した、靴職人の老人と再会する。
だが彼は気が触れており、自分をドン・キホーテだと思い込んでいた。
老人に従者サンチョと思われたトビーは、様々なトラブルに巻き込まれながら、老人と当てのない旅をするハメになってしまう…

「未来世紀ブラジル」「Dr.パルナサスの鏡」「ゼロの未来」のテリー・ギリアム監督作。
それらに共通する、虚構と現実が入り混じったSF・ファンタジー世界を描く事は彼の十八番。
煙に巻かれるような怒涛のクライマックス展開も彼っぽい作風。

他の作品と比べて、まだ分かりやすい方だけど、やはりテーマは寓意的で難解。
全てを理解しようとすると、ドン・キホーテ原作を読んでおいた方がいいかも。
原題は「ドン・キホーテを殺した男」。
内容を見るに、そっちの方が良さげ。残念な邦題だ。

虚構の中でしか生きられなくなったドン・キホーテが悲しい。
だが現実世界に生きる人たちも、それぞれが多かれ少なかれ悲しみを抱えている。
そんな人々を非喜劇のように描いた作品でした。