近藤啓二

アトラクション -制圧-の近藤啓二のネタバレレビュー・内容・結末

アトラクション -制圧-(2017年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

まず、「彼らは」というキャッチコピーはあまりうまくないミスリードのように感じた。
そもそも、不慮の事故で落下してくる宇宙船の搭乗員はたったの1人。
後は搭乗員の宇宙服と同デザインのロボット、またはそれらが併用されるスーツの一群が登場するのであって、大量のエイリアンがワサワサ出てきて地球を襲う話ではない。

宇宙船の搭乗員は静かに地球を観察するという任務を帯びたヒューマノイドで、物語は宇宙船が敵なのか味方なのか、地球人側に疑心暗鬼が膨らんでいく中で、主人公の少女とこの男性型ヒューマノイドのラブストーリーとして展開される。
宇宙人侵略ものではなく、どちらかと言えばコクーン、スターマンのような映画と言うとわかるかもしれない。

旧ソ連のSF映画と言えば惑星ソラリス、不思議惑星キンザザなど、民主主義国家の作るSFとは一風違った雰囲気があった。
ソ連崩壊後、ナイトウォッチなどを境に、個性的だった共産主義SF映画はどんどんハリウッド映画化し、味わいは薄れていった。
コマーシャリズムは民族性を均一化し、どんどんつまらないものにしていく。
この映画も7割まではそれに侵されてしまった印象があるが、今のこの時代に遠い宇宙からの来訪者がヒューマノイドで、地球人の少女と恋をすると言う、そこに古き良き素朴さ、アナログ感覚があるように思った。

人間と神秘を深く描いてきたロシア文学の残照とでも言おうか。
世界から孤立する2人を襲う地球人たち、ということを考えればキャッチコピーの「彼らは敵か味方か」と言うのは深い意味があったかもしれない。

わりと意外な好感が残る作品だった。
近藤啓二

近藤啓二