優しいアロエ

フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法の優しいアロエのレビュー・感想・評価

4.6
〈魔法の世界の片隅に〉

フロリダ・ディズニーワールドのすぐ裏にあるカラフルな安モーテル。それは世界有数の経済大国でありながら、貧富の差の大きさに問題を抱えるアメリカという国の縮図のようである。

そんな本作は、貧困層の一端を子どもたちから探っていく。是枝裕和の『誰も知らない』に影響受けたという子役たちの演出は、自然かつ印象深い。そして、子どもたちの幼気な言動が世界観やテーマを示唆していたというのが興味深い。

たとえば冒頭、子どもたちの唾吐きと汚い言葉遣いは彼女たちの生きる環境や親がどういった人物かなどを伝えてくれた。「大人が泣くとき、分かるんだ」「妖精は金貨を分けてくれない」といった子どもたちも無意識に発しているだろうセリフが、臭くも心に突き刺さった。

ディズニーリゾートが打ち上げた花火を母娘らが見上げるシーンも印象的だ。花火は誰もが平等に楽しめるもの。『万引き家族』にも似たようなシーンがあるが、人々の娯楽をこっそり楽しんでいる彼女らに涙を誘われた。

だが、あのエンディングはどうだろうか。それまでのドキュメンタリックな雰囲気に対し、意図的にミスマッチなエンディングにしている。ああいう実験的な表現自体は好みだし、感動的でもあったのだが、手放しに称賛はできなかった。

 というのも、別に子どもたちがディズニーリゾートにそこまで憧れを持っていたようには思えなかったので、心情と合っていないように感じたからだ。むしろアイス屋とか倒木のところへ走るくらいが彼女らの身の丈には合っていたような気がする。

 エンディングが喉に突っかかってとれないので(一概に否定もできない)、これでも抑えめの点数にしてある。
優しいアロエ

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